FF地区予選決勝当日。私は久々にサッカー部のみんなと顔を合わせた。 本当は来たくなかったけれど…影山が何をしでかすか分からない。 それに、有人とも話したかった。決して恋愛感情ではない…筈だ。恋愛をした事が無いからよく分からないけれど。 いつもの冷たい目で円堂は言い放った。 「よく顔が出せたな、名前」 「ふん…貴方たちに用はないよ、私は確かめたい事があるだけ」 ここ最近の雷門イレブンの様子は知らないが、どうやら土門がスパイだったらしい。 まぁ、転校生だから一番怪しいところだろう。 選手控え室にいたサッカー部を見回すと面々違った顔。 円堂や豪炎寺、風丸に染岡…同学年の奴らは私を睨んでいる。 けれど、一年生はそんなことはなく複雑そうな表情。マネージャーの三人は心配そうにしている。 「手前!何で今更…!」 「だから言ってるでしょ?貴方たちに用はない」 激昂する染岡を私は軽く言い流す。 今更仲良くしようなんてこれっぽっちも思っていない。 そもそも、先に裏切ったのはあちらなのだから仲良くする義理すらない。 私はもうここに縛られたりしない。 ふと目線を動かすと視界に「あいつ」が映った。 「…真尋」 「お久しぶり、名前」 にこりと微笑む真尋の表情は、初めて会ったときと変わらなかった。 全てを見透かしているような温かくて冷たい笑顔。思わず背筋がゾクリとした。 真尋はこちらに歩み寄ると私の手を取って首をかしげた。 「一緒にお話しよう?名前」 「時屋…!」 「ね?お話しようよ」 風丸の声を無視するように真尋は笑っている。 目の奥で私に来いと言っている。いや、行かなければならないと思わせている。 私はすぅっと息を吸うと真尋の目を見つめなおした。 「いいよ、行こう」 「ありがと、名前…みんなはここにいてね?」 彼女は天使のような微笑を浮かべて、私の手を引いた。 真尋の手は信じられないほど冷たい。生気がないようにも感じられる。 冷たくてまるで彫刻のようだ…ひんやりとしていて少し柔らかい。 そのまま私と真尋は控え室から離れた廊下で立ち止まった。 「…どういうつもり?」 「え?何のことかなぁ?」 「真尋の行動全部よ!私を貶めて何が楽しいの!?私に恨みがあるのならはっきり言いなさいよ!!」 思わず大声で叫んでしまう。いけない、響いたかも。 私が睨みつけてもなお表情を変える事が無い真尋。何を考えてるのかさっぱり分からない。 感情を表に出さない辺り、影山に少し似ている気がする。 真尋はクスクスと笑うと「内緒」と言うように人差し指を唇に当てた。 「別に名前を貶めようとしてるわけじゃないよ?名前のことが必要だから引き離そうとしてるだけ」 「私が…必要……?」 「ふふ、まだ秘密だよ?もう少ししたら何もかも教えてあげる…私のことも、私の行動の理由も、貴女のことも」 真尋は私の首に手を回して耳元で囁いた。 驚いて真尋を振り払うと私は胸を押さえた。心臓が跳ねて上手く息が出来ない。 彼女の暗緑の双眸が一瞬エメラルドのように明るい光を帯びた様な気がした。 真尋の口角がつりあがり、道化の仮面のようなねたましい表情となる。 私は気を保たせようと首を左右に振る。何もかもが分からない。 私のことってどういうこと…?真尋は何がしたいの? 彼女の考えていることを想像しようと思ったけれど、少しも思いつかない。 「まだ“その時”じゃないの…ごめんね、名前」 「ど、どういうこと…!?」 「だから秘密だよ…ほら、戻ろう?」 クスリと笑ってスカートを翻しながら控え室のほうへ走っていく真尋を、私はぼんやりと見つめた。 嗚呼、私は彼女の手の上で踊らされているんじゃないだろうか… そんな不安をよぎらせながら、私も真尋の後を追った。 偽りの顔 (その瞳が何故か懐かしい) ----------------------------------- 遅くなりましたが9話です。 すいません…青プに浮かれてて更新忘れてました;; 夏は忙しくはならないと思うので更新大目で行きたいです…! さて、今回の内容は久々の真尋ちゃんメインですね。 真尋ちゃん、相変わらず謎な女の子です…私ですら謎ですから。 もしかしたら真尋ちゃんの正体を分かってる読者様とかいるのかな…? まぁ、よく考えたら分かると思います(笑) 次の話は地区予選決勝のVS帝国戦です。サッカーしません、多分。 果実 |