宣戦布告とはよく言ったものだ。 あの後、私に手を出す者はいなかった。 まさか私が円堂を叩くとは思わなかったのだろう。 秋すらも私から目を逸らす始末。孤独感が増してる気がする… まぁ、いい決別にはなったと思う。これで躊躇する必要は無いんだ。「敵」として向き合う事が出来る。 放課後、肩の荷が下りた私は帰路を辿る。 周りを取り巻く環境が一転したあの日から、サッカー部には行っていなかった。 正直、今まで信じてきたサッカー部のみんなに相対しなければいけないのは辛い。 もうそんなことは言っていられないのが現実だ。 楽しかったあの日々はもう無い。戻っては来ないんだ… 胸が締め付けられるような感覚に顔をしかめる。 駄目だ、駄目だ、駄目だ!私はもう決めたんだ…戦うって。 弱気になんかならない、なりたくない…っ! その場に立ち止まっていると、スカートのポケットに入れていた携帯が振動した。 「非通知…?」 画面に表示されていたのは「非通知」の三文字。 非通知からかかってきた電話は本来出ないほうがいいんだろうけど… 興味本位とイライラをぶつけるのとその他色々な言い訳をつけて、私は電話に出た。 「…もしもし?」 「苗字名前だな、帝国学園に来い」 「え、ちょっ…!」 低いテノールの声で短く伝えられた言葉。 それだけ言うと相手は電話をブツリと切ってしまった。 どうして私の名前を知っているの…?それに、帝国学園に来いってどういうこと? …とりえず行ってみようかな。何があるかは分からないけど、構うもんか。 私に何かあったとしても心配をする人間などいないのだから。 「ここか…」 帝国学園は思ったよりも大きく、無機質だった。 モノクロを基調としていて、校旗だけが色を持っているようだ。 FFで無敗、サッカーの名門校と呼ばれる帝国学園…こんな形で訪れることになるとはね。 正門まで行くと黒い制服を着た生徒が立っていた。腕には腕章をつけている。 「苗字名前様ですね、案内いたします」 生徒は丁重に礼をすると、私を案内してくれた。 さすが帝国学園…生徒の教育にも熱が入っているようだ。 何とも礼儀正しい彼に案内をされて校舎内へと入る。中もとてつもなく広い。何て学校だ。 しかし…どこか「つくられた」ようにしか感じない場所だ。息が詰まりそう。 そして、学校の奥にある一室へと案内された。 中は薄暗いけれど、液晶画面だけが光を放っている。機械的だ。 よく見ると誰かが中央のチェアに座っているようだ。 すらりとした長身と、浅黒い肌に長髪。そして全てを覆い隠すようなサングラス。 この人はいつかのサッカー誌で見た、中学サッカー協会副会長の…… 「影山…零治……」 「いかにも、私が影山零治だ。歓迎するぞ、苗字名前」 電話の声と同じだ…低くて落ち着いて威厳のある声。 サングラスの奥の瞳に射抜かれた気がして、体が硬直する。 明らかに常人とは違う雰囲気を纏った影山を見ると、自分の存在の愚かさに気づかされるようだ。 すると、部屋の隅から帝国学園の生徒が椅子を持ってくる。 「座りたまえ」 影山の言葉に私は素直に椅子に座る。 目の前に座るとさらに威圧感が増したような気がする。怖い。 私が何も言えずにいると、影山が重々しく口を開いた。 「そう緊張せずともいい。私はお前に頼みたい事があるだけだ」 「頼みたい事…ですか?」 「苗字名前、お前に雷門中を潰してもらいたい」 彼の口から放たれたのは耳を疑うような言葉だった。 雷門中を…潰す……? 影に蝕まれる (彼の言葉には逆らえない) ----------------------------------- という事で7話でございます。 やっと影山さん出せました…長かった! 一期は帝国と世宇子を書くためにやってるので、中間地点突入というところでしょうか… はやく帝国メンバーも出してあげたいですね。 次回はシスコンな鬼いちゃんの登場ですよ。 お楽しみに。 果実 |