「やっぱりか……」 次の日学校に来ると下駄箱に私の上履きは無かった。 代わりに入れられていたのは生気を失っている五尾の金魚の死骸。 教室で飼っているものだろうか?鱗と下駄箱がまだ湿っていた。 何でよりによって金魚なんだ。可哀想に。 「ごめんね、ちゃんと埋葬するからね」 手を合わせてから金魚の亡骸を手に取る。 ひんやりとしていて気持ち悪いけれど、仕方が無い。 五尾の金魚を手のひらに持ったまま、校庭の隅の木の下へ向かう。 スコップが無かったので、手近にあった木の枝で土に穴を掘り金魚をそこに埋めた。 「あ、時間やばい…」 時計を見ると校舎に入らなければならない時間だった。 慌てて鞄を持って校舎に入る。あ、上履き無いんだっけ… どうしようもないが為に靴下のままで廊下を走る。うわ、滑る。 そのまま教室に入った瞬間のことだ。いきなり腕を引っ張られて私はよろめいた。 「っ…!」 「どの面下げて来てんだよ、苗字」 クラスメイトの歌河だ。目つきの悪い三白眼に睨まれる。 いや、私を睨んでいるのは教室中にいる奴ら全員だった。女子も男子も関係ない。 何十対もの瞳が、私を怨むように見ている。 「はっ…私の知ったことじゃないよ、私は無実だ」 「無実?そんなわけが無いだろう」 脇腹を誰かに蹴られた。誰かと思えば、修也だった。 サッカー部に蹴られるだなんて私ってつくづく災難…蹴られたところは感覚が無いほどに麻痺している。 スポーツマンシップとか無いのか、こいつは。 「痛いんだけど…」 「時屋が受けた痛みに比べれば軽いものじゃないか」 修也の言葉に思わず私は真尋を目で探す。……いた。 自分の席に座って、昨日と同じように生徒に囲まれている。 恐怖に染まっている目。違う、あれは恐怖じゃない。この状況を楽しむ目だ。 「よそ見するな」 今度は守に殴られ近くの机に倒れこむ。口が切れたみたいだ。鉄の味がする。 守はもっと温厚だと思ってたのに…本性を表したらこんなものなの? きらきらしているはずの瞳は濁ったように重々しい。 躊躇無く私を殴った事がよく分かる。それほどまでに冷たい声だ。 「守…貴方がそんな男だとは思わなかったよ」 「嗚呼、俺も名前がそんな女だとは思わなかったな」 そこでチャイムが鳴った。すぐに教師が来るだろう。 クラスメイトたちは慌てて教室内を整える。今のうちに… 慌ただしい教室を床を這うように移動して、私は教室を出た。 とりあえず保健室行かないと。 金魚と痛みと鉄の味 (早く保健室へ) ----------------------------------- ちょっと間が空きましたが、4話です。 本当はもっと長くなる予定だったのですが分けちゃいます… その為タイトルが意味不明です、すいません。 そもそも、円堂も豪炎寺もこんな悪い人じゃないですよね、すいません。 まぁ、嫌われですのでご理解いただける方のみということでお願いします。 果実 |