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『──リレイヌ』

ふと、名を呼ばれて振り返る。
遠い、遠い彼方で、誰かが私を見ている気がした。
優しいその眼差しにそっと下を向けば、共に「リレイヌ?」と傍で声がかかる。ミトスくんだ。
彼は俯いた私を気にかけるように「どうしたの?」と問うてくる。

「……なんでもありませんよ」

やわりと告げ、笑みを浮かべた。
ミトスくんはそれに何か言いたげな顔をすると、すぐに先行くロイドさんたちに呼ばれ彼らの元へ。世界統合を果たそうと、エターナルソードなるものを取り出す。

『リレイヌ、おいで』

優しい声に導かれるように、足を背後へ。くるりと踵を返し、私はそっと、その場から消えた。









「……あれ?リレイヌは?」

世界統合を果たしてすぐ、ミトスは違和感を感じて周囲を見回した。大いなる実りにマナを与え発芽させ、己の姉と瓜二つの精霊、マーテルと話してすぐのことだった。

「え、あれ?さっきまで確かに…」

ロイドたちが困惑に揺れる中、ミトスは己の中に焦りと不安があることを知る。
彼女が消える。彼女がいなくなる。
このままでは、永遠のお別れになってしまう。
それは嫌だと、彼の心は言っていた。訴えていた。
けれど、行先が分からない以上、どうすることもできはしない。

「リレイヌ…っ」

ずっと一緒だって、言ったじゃないかと、ぽつり…。

「……ミトス」

ふと、マーテルがミトスを呼んだ。俯く彼が顔をあげれば、己の姉と同じ顔をした精霊は、そんな彼を見て柔く笑う。

「始まりの場所へ。そこに、我らが主はいます」
「……始まりの…?」

少し考えたミトスは、ハッとしたように駆け出した。そのまま虹色の翼を背から出した彼は、勢いつけて飛び立っていく。

「俺たちも追おう!」
「うん!」

ロイドたちもすぐにレアバードに飛び乗り、ミトスのあとを追いかけた。
それを見届け、マーテルは悲しげに笑う。

「……ミトス。どうか、主を救って…」

零された声は、届かない…。

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