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ミトスくんは「は?」と疑問の声を口にした。幼い顔に驚愕の色を浮かべて精霊王を凝視している姿はこう言ってはなんだが滑稽なものだ。

「リレイヌ・セラフィーユ様は四代目龍神、アガラ・セラフィーユ様より救済を頼まれたと聞き及んでいる。この場にいるのはつまり、そういうことなのだろう」
「ま、待って。リレイヌが神様? そんなこと……ていうか、救済って一体……」
「……セラフィーユは代々、四人の管理者を定めることができる。しかし、四代目は管理者に力を授ける前にイヴと化した。遺された者は龍の遺産と呼ばれ、未だどこかの世界で苦しんでいる」
「つまりリレイヌはその龍の遺産の救済をするためにここへ……?」
「そうだ。そしてそれはお前だ、ミトス・ユグドラシル」

ミトスくんが目を見開いた。言葉を失う彼に、「四代目はお前を管理者として見定めた」と告げる。

「四代目がここを去る前に言っていた。ミトスという子は希望となり得る者だと。だから支え、導いてやってくれと。いつか来るべき時に、迎えを寄越すからと」
「……」
「……お前が主と共に歩む覚悟があるならば、我ら精霊はお前を主として再び認める。だが、今度は勇者としてではない。遺された者として、我らはお前に仕えることになる」

どうする、と精霊王は問うた。
私は、黙ってミトスくんの答えを待つ。

「……いきなりそんなこと言われても、わかんないとしか言えないんだけど……」

戸惑いがちに呟いたミトスくん。精霊王は「答えを導き出すのは簡単だ」とあっさり告げた。

「お前が主と共にありたいかどうか。それが重要な事柄だ」
「リレイヌと、共に……」

ぽつりと告げたミトスくんが、私を振り返る。そんな彼に小さく微笑めば、ミトスくんは少し黙ってから、精霊王に向き直り、こくりと頷いた。
精霊王もまた、その答えに頷いてみせる。

「ならば我らは、我らの力を持ってしてお前に仕えよう。今度は道を誤るな。我に言えるのはそれだけだ」
「……わかってるよ」

ぶっきらぼうに告げたミトスくんの中に、精霊王の周りに現れた光の礫が入っていく。やがて精霊王も光へと変わり、ミトスくんの中へ。「うわっ」と声を上げたミトスくんは、光が収まると目を瞬いて己を見た。

「……なにが」
『契約は終わった。後は好きに我らを行使せよ』
「……それはどうも」

告げたミトスくんは、すぐに私を振り返る。

「リレイヌ。管理者ってなに?どういうこと。ボクなにも聞いてないんだけど」
「別に話す必要ないかなと思いまして……まあ、結果オーライですよ。それより、解決方法もわかりましたしちゃちゃっと世界統合してしまいましょう。なにごとも早期解決、ですよ」
「……まあいいけど」

告げたミトスくんと森を出る。そんな私たちは知らない。

「……私の存在は?」

クラトスさんが悲しげに呟いていたことを…。

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