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オリジンの封印を解くため、私とミトスくんはトレントの森なる場所まで移動する。

トレントの森はヘイムダールという隠れたエルフの里に存在した。ここはハーフエルフ立ち入り禁止の場所らしく、長であろうおじさまに説得を試みなんとか里への立ち入りを許可してもらった。因みにミトスくんは顔バレ防止のため私お手製のフードを深く被っている。うん。我ながら上出来。

「よし、急ぎましょうか」

頷くミトスくんに微笑み、トレントの森へ。その奥深くに存在する封印の石碑を見つけたところで、前を歩くミトスくんが立ち止まった。見れば、石碑の前に誰かいる。あれは確か……。

「……クラトス」
「……ミトスか」

立ち上がったのはクラトスさん。ロイドさんの実父である。
クラトスさんはミトスくんと私を見比べると、「ここに何をしに来た」と静かに問うた。ミトスくんが「裏切り者には関係ないでしょ」と告げている。

「封印を解くつもりはないぞ」
「リレイヌが何とかできる。だからお前はさっさとこの場を立ち去ってくれないかな」
「この封印を何とかできるだと? ふん、出来るものならやってみろ」

嘲笑混じりの笑いは、まるで挑戦状を叩きつけてきているようにも感じ取れた。
まあどうでもいいかと、私は二人に一礼。石碑の前へ。石碑に手を当て、力を注ぐ。

「!これは……!」

間もなくして、石碑の封印は解かれた。
わりと簡単に解除されたそれに絶句するクラトスさんを他所に、私は石碑の上に現れたオリジンたる人物を一瞥。三歩ほど後退すれば、オリジンは地の上に降り立ち、私の前で恭しく頭を下げる。

「お待ちしておりました、主よ」

静かな、それでいて感極まったような声だった。
私は黙ってオリジンを見つめ、それから背後のミトスくんを振り返る。フードを取り去っているミトスくんの顔は、オリジンの態度ゆえか、困惑に彩られていた。
まあそれはクラトスさんも同様なのだが…。

「ミトスくん」
「えっ、あ、うん…」

戸惑いがちに寄ってくるミトスくん。オリジンはそんな彼を静かに見ている。

「オリジン、少し伺いたいことがあるのですが大丈夫ですか?」
「もちろんです。主が望むのであればなんなりとお申し付けください」
「だそうです、ミトスくん」

私たちの様子に、ミトスくんはげんなり顔だ。
ほんとに何者なんだろ、みたいな目を向けられるのでそれを無視して私は彼の背中を押す。
軽くよろめいたミトスくんはそのまま前へ。一つ嘆息してから、「世界のことで聞きたいことがある」とオリジンを見た。

「世界を統合したとして、マナが不足するのは避けられない事実。それを防ぐためにはどうすればいい?」
「……楔が必要だろうな」
「楔?」
「そうだ。楔…そうだな…大樹を楔とすれば、恐らく…」

ミトスくんがこちらを見るので、私は微笑んで頷いた。それできっと大丈夫、という意を込めたことに気づいたのだろう。ミトスくんはホッと息を吐き出すと、「じゃあ世界を統合しても大丈夫なわけだ」とそっと告げた。「ですね」と頷く私に、ミトスくんも安心したように笑みをこぼす。

「主よ」

ふと、オリジンが私に声をかけた。
「はい?」と振り返れば、彼は問う。「その裏切り者は選ばれたのか?」、と…。
私はパチリと目を瞬き、「さあ?」とひとつ。
オリジンは深くなにかを考えると、視線をミトスくんへ。重苦しく口を開く。

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