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食事をとって、ひと足早く眠ると部屋にこもった。そうしてスヤスヤと寝入っていれば、ふと聞こえた悲痛な悲鳴。腹の底から張り上げたようなそれに薄らと目を開ければ、共に「リレイヌ」と聞こえてくる私を呼ぶ声……。

「……みとすくん?」

微睡みながら疑問を発せば、ミトスくんは暗闇の中微笑んだ。そして、私の手をとり、目を細め、「行かなきゃ」とポツリと発す。

「……みんな、ユグドラシルを追ってる……悪の権化を討とうとしてる……」
「……」
「だから、行かなきゃ……行って、ボク、ちゃんとやらなきゃ……だから……っ」

私はそっと彼の手を握った。震えるソレを眼下、「ミトスくん」とその名を呼べば、彼は静かに私を見つめる。

「言ったでしょう?私も手を貸します、と」
「……」
「君は一人じゃない。その言葉に、嘘偽りはありませんよ」

さ、行きましょうか、とベッドを抜け出した。そうして立ち上がれば、未だ私と手を繋いだまま、ミトスくんがぽつりと言う。

「お礼は、全て終わってからだよね…」
「はい」
「うん。わかった。行こう」

告げた彼は、もう、大丈夫そうだった。







キィ、と開いた扉から出てきた二人の少年少女。一足遅れてその場にやって来た彼らに、視線は自然と突き刺さる。

「リレイヌ!ミトス!」

ジーニアスが二人の名を呼べば、共にレネゲードの長であるユアンが顔を歪めた。驚愕に染まるそれは、明らかに現状に対しての絶望を表している。

「ユグドラシル!?お前がどうしてここに…!」
「え…」

どういうことだと、皆がミトスを見た。
ミトスはそんな皆の視線を受け止めながら、繋いでいたリレイヌの手を離して前へ。一歩一歩と、近づいてくる彼に、ユアンは思わず後ずさる。

「素晴らしくくさい演説ご苦労さま、ユアン。もうお前はいいよ。はやく僕の目の前から消えて?」
「くっ…!自分を偽りロイドたちに接近していたか…っ。おのれ、ユグドラシル…!」
「……」

ミトスは片手を上げた。そうしてユアンに向かい魔術を放つ。
強烈なそれは容易くユアンの体を吹き飛ばし、彼は地面へ。苦しげにそこに転がる。

「ミトス…!なにして…!」
「裏切り者に制裁を加えて何が悪いの?寧ろ、これくらいで許してやろうって言うんだから褒めてもらいたいものだね」
「……ミトスくん」
「……わかってるよ、リレイヌ」

くるりと振り返った彼は、「行こう」と彼女に片手を差し出した。柔らかに笑むその姿に、迷いはひとつも見受けられない。
咄嗟にリレイヌの前に立ちはだかったアルテスタをやわりと退け、リレイヌはミトスの傍へ。皆が名を呼んでくる中、それらを振り返り、ニコリと笑う。

「きっと、大丈夫ですよ」

なにが、なんて分からなかった。
けれど、その言葉には妙な安心感があり、強ばった表情を浮かべていた面々は自然と体の力を抜いていく。

「……リレイヌ」

ロイドが彼女を呼ぶ。
彼女はそれに、小さく微笑み、ミトスと共にその場から消えるのだった。

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