2




オゼットに落雷が落ちた。遠目からでも分かるほどに巨大なそれは、人為的に作られたものだろう。ロイドたちはレアバードをオゼット方面へと傾けながら、町の人たちの安否を祈る。

オゼットに降り立てば、その凄惨さが嫌でも目についた。大量に倒れた町の人たち。焼け落ちた多くの家屋。今もなお燃え続ける大木は、ごうごうと赤い炎を舞いあげている。

「一体なんでこんな……」

沸き上がる悔しさに、グッと拳を握った時だ。「ガウッ! ガウッ!」となにかが吠える声がした。ハッとしてそちらの方向に向かえば、そこは落雷の落下地点だったようだ。火の回りが凄まじく、地面は黒く焦げ付いている。その場にいるだけで肺が焼かれそうな空気の中、ロイドは周囲を見回しながら火の海へ。皮膚が焼かれることも気にせず、音の発生源を確かめるべく足を動かす。

「ガウッ! ガウッガウッ!」

暫く進んだところに、それはいた。ウルフ型の魔物のようで、思わず剣を抜きかけたロイドは、しかし様子がおかしい魔物を不思議に思いその傍らに駆け寄った。そして、魔物が吠えつける先を見て、目を見開く。

「ミトスッ!!!」

そこにいたのは紛れもない。正真正銘、ロイドたちの知るミトスその人だった。傷を負っているのか、ところどころに負傷した痕が見受けられる彼は、崩れた大木に押し潰されるようにして倒れている。
慌てて駆け寄ってきた仲間たちと共に大木を退かせば、その下から出てきた友人は小さく呻いた後に目を開いた。

「ミトス!!」

「っ、……みなさ……っ!! リレイヌ!!」

ハッと目を見開き起き上がったミトスは、けれどそこで痛みに襲われ顔をしかめた。リフィルがすぐに治癒術をかけるも、彼を支配する痛みはなかなか引かない。それに一抹の悔しさを覚えながら、ミトスは「リレイヌがっ!!」とすがるようにロイドを見上げた。

「リレイヌ? リレイヌがどうした?」
「知らない人たちに襲われて、重傷を負っています! すぐにでも見つけて治癒しないと死んでしまう!」
「なんだって!!?」

驚くロイドの横、「ガウッ!!」と吠えた魔物が駆け出した。それに続くようにミトスも立ち上がれば、「無茶をしてはいけないわ!」とリフィルから咎められる。けれど、ミトスはその声には従わない。ただ焦ったように魔物の後を追いかけている。

「ガウッ!!」

吠える魔物が止まったのは、火の勢いが少し弱まった場所だった。足を止めて周囲を見回せば、小さな木の下に探し人の姿を発見する。彼女は木にもたれ掛かるように座り込み、ぐったりとしている様子だ。その腹部からは止めどなく血が流れている。

「リレイヌッ!!!」

ミトスが駆け寄り、その体を抱き起こした。声をかけるも反応はなく、リフィルが急いで治癒術を施している。だが……。

「いけない。傷が深すぎるわ! 私の治癒術では間に合わない!」
「じゃあどうするの!?」
「腕のいい医者を知ってる。そいつのとこまでリレイヌを連れていこう!」
「でも、そこまでこの子の体力が持つかどうか……」

究極の選択だ。絶望に顔色を変える面々が、悔しそうに下を向く。未だ治癒を続けるリフィルも苦い顔だ。
そんな中、ミトスは「お願いします……」と掠れた声を絞り出した。俯き、震えるその姿は、とても小さく弱々しい。

「お願いします。リレイヌを助けてください……」
「ミトス……」
「ボク、リレイヌが助かるならなんだってします……だから……」

言いかけたミトスの肩に、ロイドの手が触れた。振り返った彼に大きくうなずくロイドは、もちろんだと笑みを浮かべる。

「助けよう。必ず」

その言葉に、くしゃりとミトスの顔は歪められた。

[ 29/43 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -