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「おーい! 二人とも! こっちこっち!」

大きく腕を振るロイドさんを見つけ、頭領宅を後にした私たちは彼らの元へと歩み寄る。「なにしてたんだ?」と問われる言葉に「なんでもないですよ」と返せば、ロイドさんは不思議そうにしながらもそれ以上は問い詰めないでくれた。そのことにありがたさを覚えながら、私は皆の方へと顔を向ける。

「あ、そうだ。二人とも、改めて紹介するよ。こいつはリーガル。暫くは戦闘にも参加するからよろしくな」

ふと、思い出したように紹介されたのは青い髪の囚人だった。「よろしくお願いします」と頭を下げれば、それに対して同じく頭を下げるリーガルさん。繰り返すように再び名乗った彼が顔をあげると同時、今まで大人しかったプレセアさんが口を開く。

「私……オゼットにかえりたい……」

ぽつりと、こぼすように告げられたのは、帰宅を願う一言だ。

「オゼット、といえば、アルテスタさんの家に行く途中にある村のことですか?」
「リレイヌ、知ってるのか?」
「はい。何度か薬の販売に立ち寄らせていただいてますので……」

記憶を巡らせながら答えれば、ロイドさんが言った。先にプレセアさんを帰しても大丈夫かと。もちろん、断る理由もなかったので頷けば、彼は一言感謝した後に今後の在り方を口にする。

「よし! まずはプレセアを、次にリレイヌとミトスを送り届けよう!」

異論はないかと確認すれば、皆一様に頷いた。どうやらこの順序で大丈夫なようで、決定した事柄に取り組むべく、皆そそくさと歩き出す。

「……良かったの、リレイヌ?」

前を行くロイドさんたちを視界、小さく問うてきたミトスくんににこりと笑う。それだけで言いたいことは伝わったのか、ミトスくんはため息と共に「お人好し……」と呟いていた。





ガオラキアの森を抜けたその先に、プレセアさんの故郷であるオゼットはあった。
大きな木に根づくように木製の家が点々と立っており、木の影の下にある街は全体的に薄暗い。

「ここにプレセアの家があるの?」

振り返ってジーニアスくんが問いかければ、プレセアさんはそちらを見る事もなく村の奥へと走って行った

「プレセア……」
「と、とりあえず追いかけようぜ!」

しょぼくれたジーニアスくんを励ますように、ロイドさんが歩を進めだす。プレセアさんを見失わないように、他の面々もロイドさんに続く。

薄暗い村を走り、村の最奥についた所でプレセアさんの姿を見つけたが、家の前にいたのは彼女だけではなかった。

「……助かりますよ。おや? あちらもお客さまですかな?」

こちらに気付いたのか。
言葉を発した初老の男性。その口調は柔らかいものの、赤い色つき眼鏡から覗く目はどこか冷たい。
ミトスくんがそっと私を背後へ隠した。ちらりと覗き見た彼の顔は無表情だ。

「運び屋……」
「ほう、運び屋さんですか……」

プレセアさんの答えに男性の目が細められ、不気味な色をした目と皆の視線が絡む。

「プレセア! 要の紋を作らないと!」
「仕事……さよなら……」

もうこちらに関心はないのか。
プレセアさんはコレットさんの言葉に聞く耳も持たず、家の中に入っていってしまった。

「教会の儀式に使う神木はプレセアさんにしか取りに行けないので、彼女が戻ってきてくれてこちらも大助かりです。ふぉっふぉっふぉ……」

彼は教会の関係者なのだろうか。
ロイドさん達は不気味な笑い声を上げる男を黙って見送った。

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