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「でも、何で、こんな事をしてるんですか?」
コレットさんが声をあげた。
プレセアさんが治ることよりもまず、何故このような非人道的な行いをするのかが不思議だったのだろう。どうしても訊ねずにはいられなかったと、彼女の目は語っている。
「教皇よ。私達とアルテスタは彼に命じられてこの研究に関わっているの」
教皇といえば聖職者の最高位に位置する称号だ。そのような者がこのような物騒極まりない実験に加担しているとは、世も末である。
へえ、と内心頷く私をよそ、ゼロスさんがケッと一言。
「やっぱりあのヒヒじじいの差し金かよ」
「ヒヒじじいだなんて言わないで!」
口の端を上げたゼロスさんをケイトさんが強く睨みつける。
何が彼女の怒りに触れたのかは分からないが、彼女の声は広くはない部屋によく響いた。
「おっと、ハーフエルフが教皇の肩持つとは珍しいな」
確かに、話の流れから見るに、ケイトさん達は教皇のせいでこんな場所に閉じ込められているのだ。本来なら教皇を恨む筈なのに、何故彼女はそうしないのだろう。
「……別に肩なんて持ってないわ」
ケイトさんは小さく首を横に振ると、再び眼鏡を押し上げた。
「とにかく、ひとまずアルテスタの所だね。ガオラキアの森に向かおうか?」
気を取り直したようなしいなさんの声に、ロイドさんも頷く。
だが何か引っかかる事があるのか、微かに眉間に皺を寄せている。
「そうだな。それにしても……まさか教皇とディザイアン達はつながってるのか?」
「そうね。気になるわ」
相槌を打ったのはリフィルさんだ。
それに続くように、しいなさんが口を開く。
「可能性としては高いと思うよ。ただの偶然で、こんな事があるわけがない」
偶然としても許せないが、計画性のあるものならもっと許せない。
そう言いたげな彼女たちを視界、ちらりとミトスくんを盗み見る。軽くうつ向く彼の表情は、決して喜ばしいものではなかった。
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