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以前脱出した時と同じように下水道を通り、中の研究室に行く。すると、驚きに目を見開くケイトさんが迎えてくれた。
他の研究員も、まさか本当に戻ってくるとは思っていなかったのか、動揺を隠せないようだ。
そんな中、最初に我に返ったケイトさんは、ゆっくりとジーニアスくんとリフィルさんに歩みよると、吟味するかのように二人を見つめていた。

「この二つの血が融合した不思議なマナ……間違いなくハーフエルフね」
「話は聞いていてよ。プレセアはクルシスの輝石を体内で作らされているとか?」

同族に会えて嬉しいのか、初対面の相手に警戒心を抱く事無く、リフィルさんはケイトさんに歩み寄る。ケイトさんはゆっくりと頷き、眼鏡を指で押し上げた。

「そうよ。私たちはエンジェルス計画と呼んでいるわ」
「エンジェルス計画! 母さんが関わった計画と同じだ……!」

ロイドさんが声をあげる。

「ごく普通のエクスフィアに要の紋の特殊な仕掛けをする事によって、エクスフィアの寄生行動を数日から数十年単位に伸ばしているのよ」
「エクスフィア自体は特殊ではないって事?」

ケイトさんの言葉に、ジーニアスくんは首を傾げる。
ケイトさんは頷くと、解説を続けた。

「そうよ。寄生行動を伸ばす事で、エクスフィアはクルシスの輝石に突然変異する事があるらしいわ」

ケイトさんの言葉にリフィルさんは瞠目し、小さく息を呑んだ。

「まさか……プレセアの感情反応が極端に薄いのは、エクスフィアの寄生が始まっているからなの?」
「それじゃあ以前のコレットと同じだよ!」

叫ぶように、ジーニアスくんが声を上げ、コレットさんが肩を揺らす。
話はよく分からないが、数日前のコレットさんとなにか関係があるようだ。

「このままだと、プレセアはどうなるんですか?」

プレセアさんの事を想ってか、コレットさんの目が悲しげに細められる。
その視線に耐えられなかったのだろう。
ケイトさんが視線をそらしながら口を開いた。

「寄生が終わると後は……死んでしまう」
「そんなの酷いよ! プレセアが何をしたっていうのさ!」
「何もしていないわ。ただ、適合検査に合っていただけ」

ケイトさんの言葉に、ロイドさんは唇を噛みしめた。

「それだけの理由で……」

歯がゆいのだろう。握られた拳が震えている。

「約束だ。プレセアを助けてくれるな」

ロイドさんが、強く前に出る。

「ええ、分かってる。あなた達はハーフエルフを差別しなかった」
「ケイト! いいのか! そんな事をしたらお前が……」

ケイトさんを咎めるように研究員が言ったが、ケイトさんは聞く耳を持たない。
抗議する研究員を一瞥し、ケイトさんは真っ直ぐロイドさんを見つめた。

「約束は約束よ。プレセアを助ける為にはガオラキアの森に住んでいるアルテスタというドワーフを訪ねるといいわ」
「え? アルテスタ?」

と、ここで皆の視線が私に突き刺さった。突然の発言に反応を示す気持ちはわかるが、そう一斉に見ないでもらいたいものだ。

「知り合いなのか?」

問うてくるロイドさんに、こくりと頷く。

「私、アルテスタさんの家に居候している身なんです」
「本当か!?」
「はい」

嘘は言っていない。そういう意を込め再び頷けば、ロイドさんの顔が晴れやかになった。これでプレセアさんを確実に助けられると、そう思っているのだろう。

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