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「──そんじゃ、セバスチャン。くれぐれもうちのハニーたちのこと、よろしく頼むぜ!」
「かしこまりました、ゼロス様。お気をつけていってらっしゃいませ」

きっちりと頭を下げる老執事。ゆるりと顔をあげた彼に「おうよ!」と笑ったゼロスさんが、ロイドさんたちと共に去っていくのを、私とミトスくんは黙って見送った。
わりとすぐに消えた背中に踵を返せば、セバスチャンさんから「さあ、中へと」屋敷内へ促される。

「改めまして、私はセバスチャンと申します。なにか御入り用がありましたら、いつでもお声をおかけくださいませ、ハニー様」
「……ありがとうございます」

謎の呼び名に苦笑しつつ、仕事に戻るセバスチャンさんを一瞥。ややお疲れ気味なミトスくんへと視線を向けた。

「ミトスくん、どうかしました?」
「……どうもなにも、厄介ごとに巻き込まれすぎだよ。これじゃあ、いつアルテスタの所に帰れるか、わかったもんじゃない」
「まあまあ。旅にハプニングは付き物ですよ」
「お前と旅をした覚えは一切ないんだけどね」

おや、つれない。

腕を組んで顔を背けるミトスくんに、「ほぼ旅してるようなものじゃないですか」と一言。ポーチの中より書籍を取り出し、彼の目の前へと突きつける。

「待つ間、少しお勉強でもしましょうか」

微笑めば、ミトスくんはただ一度だけ、頷いてくれた。

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