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おおよそ30分が経過した頃。なにやら外が騒がしくなってきた。
お陰さまで集中力を削がれた私は、適当に集めた書籍をポーチの中へ。同じく集中力が切れたらしい少年と共に、部屋を出る。
「──先生!ジーニアス!」
部屋を出た瞬間、まず聞こえてきたのは男の子の声だった。悲痛ともいえるその声色に、私の隣にいた少年がピクリと反応。若干、苦々しげな顔をする。
まるで予期せぬ事態に遭遇したような、会いたくない人物に出会したような、そんな顔だ。
「……どうかしましたか?」
一応と、問いかけてみる。
そんな私から、少年は何も言わずに顔をそらした。
「──む?なんだ、貴様らは」
なんとなく居たたまれなくなるような、微妙な空気にどうしたものかと悩んでいると、ふと、そんな声が真横からかけられた。
振り返れば、銀髪の女性と少年を取り囲む、いかにも騎士ですよ、と言いたげな者たちの姿が確認できる。そのまた後ろには喚いている赤色がいるが、彼はさて、なんなのだろうか。
突然のことにキョトンとしていると、一人の騎士がこちらへ。「怪しい奴らだな」と吐き捨てると、私と、無言の少年とを見比べた。
「見たところ、この研究所の者ではなさそうだが……貴様ら、さてはこいつらの仲間か?」
「仲間? なんのことです?」
訳がわからないと首を捻れば、しびれを切らした様子の少年が声を発す。
「ボクたちは正式な手続きの元、研究所に入ることを承諾された一般人です。その人たちとは無関係ですよ。見たこともありません」
「そ、そうだよ! その子たちは関係ない! 無関係の子を巻き込まないで!」
銀髪の少年が叫べば、騎士は笑った。「ますます怪しいな」と告げた彼は、何を思ったのか、不可思議な機械を取り出すと、それを私の隣にいる少年の腕へ。押し付けられたそれがピピッ、と音を発すと同時、騎士の声色が怒りに染まる。
「貴様!ハーフエルフか!!」
どよりとしたざわめきが広がった。
無言でうつ向く少年に目を瞬けば、次に機械は私の腕へ。少年が取り押さえられる横で、ピーッ、と謎の機械音をあげる。
「む?エラー?」
こんな時に故障か、と、騎士は舌打ち。まあいいと、私の片腕を掴み、適当な動作で赤色の彼の元へと放った。
「っと!大丈夫か!?」
「へ?ああ、はい……」
曖昧に頷けば、赤い彼は共に吠える。
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