5

学園都市サイバック。
名の通り学問に流通したこの街は、学生や研究員により溢れ返っていた。さほど人ごみは多くないものの、やはり苦手は苦手である。

夜も遅いということで宿をとった私は、早朝、少年と共に王立研究所を訪れた。いかにも研究者ですよと言いたげな白衣の方々を横目、少年の演技力に感心を覚えながら屋内へと踏み込んだ。
関係者以外は滅多に出入りできない場所のようだが、研究所の中はまるで博物館。なんだ、普通じゃないか、と拍子抜けしてしまったのは仕方がないことだろう。

「ほら、行くよ」

声をかけられ、止めていた足を動かした。
そうして前を行く少年を追いかければ、彼はとある部屋の前で歩行を停止。特に躊躇する様子もなく、閉ざされた扉を押し開ける。

──ぎぃ……っ

怪しい音が鳴る。

「ここは資料室。この中の何処かに魔物についての資料があったはずだから、さっさと探すよ。あんまりもたついてたら怪しまれる」
「まずこの時点で怪しまれないことに、この研究所の危うさを感じますが……」
「どうでもいいから早く探して」

つれない子だ。
ちぇっ、と肩をすくめ、書籍の並ぶ棚の前へ。所々に貼り付けられたネームプレートを確認しつつ、魔物関連の資料がありそうな箇所に目星をつける。若干適当ではあるものの、この方がてっとり早いはずだ。
並べられた書籍の背表紙を一つ一つ確認し、魔物の文字を探す。

そんな私の背後で、少年はレポートだらけの机の上を調べていた。その中にも、いい感じの資料が紛れ込んでいると、彼は踏んだようだ。眉を寄せ、端から順に記された内容を確認している。
かなり時間がかかりそうだが、敢えて何も言うまい。私は黙って視線を戻した。

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