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「──便利なもんだね。魔物って」

長距離移動ということもあり、時短をしようと、ウルフ型の魔物に乗って地を駆ける私たち。少年だけでは心許ないということで、謎の二人乗りを披露しながら、私たちはメルトキオへと向かっている。少年曰く、グランテセアラブリッジという巨大な橋を越えればすぐだそうだ。

「便利は便利ですが、そういう事はあまり言わない方がよろしいですよ」
「どうして?」
「彼らにも感情はありますので」

ねえ?、なんて問えば、ウルフは返事を返すように元気よく鳴いた。走りながらもこの声音。さすがは魔物といったところか。

背後で私に掴まる少年が、「ふーん」と素っ気ない返事を返す。きっとどうでも良いという表情を浮かべているのだろうと予測しながら、私は「それはそうと」と話題を変えた。

「自己紹介ってまだでしたよね?」
「必要ないでしょ。ボクたちは仲間でもなんでもないんだから」
「えー、でも不便ですよ?」

多分、と心の中で付け加えたと同時、前方に巨大な橋を発見。といっても、想像したよりも全然小さなそれは、すぐにでも渡りきってしまえる大きさだ。これならばアメリカの橋の方がまだでかい。

自然と足を止めた魔物から降り、私たちは橋の上へ。青々とした橋と海との、不思議なコントラストを視界、特に何も言うことなく歩き出す。

「──ほら、城が見えるでしょ。あれがメルトキオ」

橋の上を歩きながら、少年は告げる。彼の指差す方向を見てみれば、確かに城のようなものが確認できた。しかしやはり、たいした大きさではない。比べるのもあれだが、これでは私の屋敷の方がまだデカイはずだ。

「……意外と小さい」

ぽつりと一言。「何言ってるの」と呆れ顔の少年に、「失礼しました」と口元を抑えた。







「──ありがとう。助かったよ。これは代金と、それからお礼ね」
「ありがとうございます」

ぺこりと一礼して受け取ったものをポーチの中へ。そそくさと道具屋を出れば、ぼうっと待ちぼうけていた少年がこちらを見た。「終わったの?」と問うてくる彼に頷けば、「そう」と短く返される。

「こんな時間までお付き合いくださり、ありがとうございます」
「別に。そんなことより、早く魔物の言語を教えてよ。まさかここまできて約束を破る、なんてことは言わないよね?」
「失礼な。私は交わした約束は必ず守ります」

けれども、魔物の言語習得にはそれなりの時間と場所、資料等が必要となる。魔物に関連した資料を入手し、アルテスタさんの家で勉強が出来れば、一番効率がいい。

それを伝えれば、少年は納得したように頷いた。どうやら異論はないようだ。それならそれで早くしようと、すでに茜色に染まりかけた空を無視して街の出入り口へと向かっていく。

「……サイバックという街が道中にある。そこにある王立研究所で資料を手に入れて、アルテスタの家に向かう。研究所への立ち入りには許可証が必要だから、それをとりあえずどうにかしよう」
「偽造ですか?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれない?」

そんなんじゃないよ、と少年は告げた。彼が言うには、知り合いにそれを持った者が存在するとのこと。

「ちょっと拝借するだけ」

確実に悪い顔で吐き捨てた少年に、それも十分人聞きが悪いのでは……、と思う私は、きっと間違ってはいないはず。ちょっとばかし楽しそうな少年の背中を見つめながら、そっと息を吐き出した。

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