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そして、その微妙なタイミングで、藤堂と芹沢一派がやって来た。
藤堂は今、晃のお蔭で気絶してしまった豆鉄砲の為に、濡れた手拭いを取り替えてきたところだった。

「晃ー、ウブな童をからかうなよ。」

晃の言った事が聞こえていたらしく藤堂は言うが、豆鉄砲は童という言葉に大きく反応する。

「わっぱではありません!!」


その威勢の良さを芹沢が気に入り、座ると鉄扇で豆鉄砲を指しながら訊ねた。

「威勢が良いのぅ。気に入った!!
 其の方、名は何と申す?身分・年齢は?」
「神谷清三郎。
 京に住んで5年になりますが、父は元江戸府内直参の臣。私はその次男坊にございます。
 歳は18!」


神谷清三郎は威勢良く答える。が、
「嘘をつけ。
 いいとこ12、3だろう?話しにならん。帰れ童。」

全く神谷の言う言葉を信じず、土方は手でしっしと神谷を追い払うような仕草をする。
確かに神谷は背格好を見る限り、とても18には見えない。


そして、神谷はまた童という言葉に反論し、失態を犯してしまう。

「童ではありません!歳だってもう15で―――」
「ほーう、15か。」

とたんに神谷は「しまった」とでも言うように手で口を押さえた。
土方はニヤリと笑う。

「童には変わらんな。まだ声変わりもしとらんその様子だ。」
土方が言った言葉をフォローするのか、それともただ単に神谷の事について知るためか、近藤が話しを逸らす。


「しかし、直参というと父御は将軍家直属の家臣であられるのか?」
「いえ、故あってとうに浪人の身。
 その父もこの春に亡くなりました。」

神谷の顔が、クシャリと歪んだ。

「おぉ、なんと不憫な!!近藤氏、採用じゃ!!」

口からでる言葉とは裏腹に、顔はとてもニコニコとしながら答える芹沢。
やはり土方はその言葉にイラっとして多少の文句をするが、芹沢は土方が好きでないらしい。
土方自身も芹沢は好ましくないのだが、それを無視して「自分は近藤に話しているんだ。」そう言って新見に賛同を求めるのはいつもの事。
そして土方が殴りかかろうとして近藤が止めるのもいつもの事。



「まぁまぁ土方君、良いではないか。採用しよう。何しろ元直参だ。」
「証拠もないのに信じるのか近藤さん!?
 だいたいそんな家柄の者がどうして……。」
「お待ち下さい!!
 壬生浪士組では、家柄・身分に関わりなく尽忠報国の志のある者を募ると聞いて参りました!
 確かに、私は元服前の未熟者ですが、志だけは誰にも負けぬつもりです。
 評議なさるなら私の身分ではなく、志を評じて頂きたく存じます!」


確かに神谷のに目はとても強い眼差しがある。

「―――ふん。言うじゃねぇか。総司!!」
「はい?」
「当分お前の下に置け。
 童の扱いはお前の得意だからな。」
「…え、それじゃ?」

「――神谷清三郎、合格だ。」

その言葉を聞いた途端に、神谷の表情が緩んだ。

「ありがたき幸せにございます!!」
「良くないです!!」

突然晃が大きい声を出すと、土方と総司は普通に振り向いたが、芹沢と近藤、藤堂はかなり驚いた。
藤堂に至っては、「何だ?!」と言いながら数歩座ったまま後ずさりまでした。


「どうしたんですか? 。」
「土方さん、どーして総司なんですか?!どーしてこの昼行灯なんですか?!
 別に私の下に置いたっていいじゃないですか〜!!
 私、普通の年下の子を持った事一度もないんですよ?!
 可愛い下の弟を持つ事が私の小さな夢なんですって〜!!
 私は今までいろんな所を転々としてきましたけど、一度として普通の・・・弟を持った事がないんですよ?!
 どーして総司なんですか?!」


凄い勢いで同じ事を2度も言う 。
しかし、土方は晃の頼みを聞こうともせず、しらっと言ってしまう。

「お前もそうだが、総司だって末っ子だろ。
 それにお前等はいつもいろんな子供と寺で遊んでるじゃねぇか。弟なんか居るも同然だろ。
 大体、お前だって昼行灯に変わりねぇだろーが。
 そこを同等だと考えると、お前はさっきこいつに手加減もしないで技を食らわしてたしな。
 何仕出かすか分かんねぇじゃねーか。」


晃は大声を出してからふて腐れたままだ。

「確かに手加減しなかったのは私ですよ?一応しましたけど。
 でも、土方さんが一発食らわしてみろって言ったんじゃないですか。
 それに、土方さんだって試衛館に居た頃、総司との歳の差も考えずに竹刀を振り下ろして、総司の腕の骨折ったそうじゃないですか。
 いくら総司が子供なのに子供にしては強かったとは言え、あれは酷いですよ。
 私だってよく土方さんにいじめられましたし。」

「うるせぇっ。
 とにかく、お前に神谷は無理だ!」
「どうしてですか土方さーん!わた「いいから出てけ!!」

 

土方に無理矢理追い出された晃は、それから暫く落ち込んだままだったという。



ちなみに後日談によると、土方が一発食らわしてみたかったのは、神谷の度胸と根性がどれだけあり意思が強いかを調べたかったらしい。

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