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「トシ!!晃も総司も。」
「「あっ近藤先生v」」
「トシまで喧嘩に加わるなよ…。
スマンが総司はちょっと外へ出ててくれないか? 後々総司にもこの件については協力してもらうだろうから。な?」
近藤に言われたのならばと、渋々ではあるが総司は部屋から出て行った。
「全く。トシも晃や総司と大して変わらんじゃないか。
すまんな斉藤君。
では、話し合いを始めようか。」
土方は、近藤に晃や総司と同等に見られたのが気に入らないようだが諦め、ようやく話し合いを始めたのだった―――
「――――今回話すのは、まあ二人も察しは付いているだろうが、
最近隊士が続々と殺されているという件についてだ。」
緊張が張り詰めている部屋の中。
―――まあ、それも当たり前だろう。
ここ最近、隊士が次々と何者かに斬られている。
ただおかしいのは、屯所の中で死体が見つかっている、という点だ。
それだけなら、まだ壬生浪士組の中に間者が居るのだろうと察しがつくし、密偵が動けば二日もあればそれが誰か分かるだろう。
だがもう一つ問題がある。
それは、隊士達が斬られる時、誰一人として抵抗していないという事。
抵抗をする前に。つまり、刀を鞘から抜く前に全員斬られているのだ。
縮地(しゅくち) を使える晃ならそれは可能だろう。
だが刀傷は晃のものではないし、第一彼がそんな事をする筈が無いのは皆が百も承知のことである。
「が、まず間者だという事は無いだろうな。」
「間者ではなく、隊士を次々と殺しているのだとすれば、その人は相当狂っているのでしょうね。」
「ああ。恐らく、そいつが斬る理由は一つ。
―――――人を斬りたいだけだ。」
「―――― 一つ…思い当たる節があります。」
「何か知っているのか晃!?」
近藤が焦る。
それも当然の事だろう。
自分が局長を務めている、自分の隊の中に仲間を殺している奴がいるのだ。
これが町にでも広がれば、『壬生狼は三度の飯より人斬りが好き』という噂が確実に、もっと定着していくのだ。
――――早く、この事件の犯人を消さなければ…………!!
「いいか、晃。世の中はお前が知っているよりもっと広い。」
確か、そんな言葉から始まって教えられた―――
「昔、飛天御剣流の比古師匠に教えられた事があるんです。
二階堂平法、”心の一方(しんのいっぽう) ”。”居縮の術(いすくみのじゅつ) ”とも言うそうです。
二階堂平法は、一と八、そして十文字の三段の型で構成されます。
平法の”平”は、その一・八・十の字画で”平”と成し、故に平方と呼ばれるようになりました。
しかし、最も不気味で恐れられ広くしられるのは、その奥義にある開祖のみが使えたという『心の一方』にあるんです。
心の一方は、自分の目から発した気を相手の目にたたき込む事で、相手を金縛りにするという秘技中の秘技。
一代限りで、後には伝わってない技と言われています。
…だから、その人がまさか奥義を使えるという事は、有り得ないに等しいのですが…。」
「だがその可能性も考えられる、という事か。」
ふむ、と近藤が考え込むように腕を組んだ。
「その流儀らしき剣を振るう隊士に心当たりはあるか。」
「例の鵜堂刃衛はそれに近いかと思いますが…。」
「ええ。私もそう思います。」
普段隊士達の稽古の様子も見ている月村と斉藤の話を聞き、質問者の土方は眉間にシワを寄せたあと、スッと息を吸った。
「―――よし!
斉藤、月村!今から奴の行動を探れ。
相手はかなり強いはずだ。奥義にも、くれぐれも注意するように。」
「「承知。」」
―――そうして、奴の監視が開始された――――――
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