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晃の手元にある紙には、不細工な似顔絵の男が描かれている。
「この人ですか…。」
「ああ。
他の奴等は皆捕らえたんだが、こいつだけ高鍋藩邸の近くで見失った。
こいつらの仲間の中には肥後や土佐も混ざっていた。
逃走中に町人を一人殺している。」
「ったく。どーしてこういう奴等ってのはこうも外道なんだ。」
「今日中にでも捕らえないと、また町の人が殺されますね、この状態じゃあ。」
屯所にいる幹部のみの集まり。
それぞれが複数の同じような紙を持ち、それぞれがその紙を見ながら土方に説明されているところだ。
どうやら、今朝の巡察隊が一人取り逃がしたようで、その会議をしているところだった。
「これで会議は終わりだ。それぞれ戻れ。
ただ、pと斉藤は残れ。話がある。」
「「はい」」
会議は終わり、#myojiと斉藤が残った。
―――理由は、ひとつしか考えられない――――のだが、すぐには話し合いを出来そうにない。
何故なら――――
「晃ばっかりずるいじゃないですか!」
「…は?」
「だって、土方さんが私を密偵に入れてくれなかった理由は分かりますよ?
そりゃあ晃みたいに悪知恵利かないし。仕方ないかもしれません。―――でも!!」
「ちょっと待て総司。
どうして私がこの役職に配属されたのが悪知恵だけのお陰みたいな事言ってんだよ!」
「まったくもってその通りじゃないですか。
私がちょっと晃のお菓子を貰っただけで、巡察帰りで暗いし眠い時に私に縄をその辺に付けておいて、転ばせてるじゃないですか!」
「てめぇのは貰ったんじゃなくて盗んだ(・・・) んだろうが!!
しかもその手に幾度と無く引っかかってるのは誰だ!!」
「だって眠いし暗かったら気付かないですよ!
あとこの間も、私がお菓子貰ったら自分の押入れの中にあった腐った物と取替えてたじゃないですか!
私はそれでお腹を壊して大変だったんですよ!
同じ店で同じものを買ったようだったし、見た目だって変わってなかったからつい食べてしまいましたけど……!」
「それにさえも気付かなかった馬鹿はどこのどいつだ!」
――――その 瞬間(とき) ―――
「―――だぁぁぁあああぁあああ!!
るっせえ!!
てめぇらどっちも馬鹿だ!
総司!てめぇはさっさと帰ってさっきの報告でもして来い!
晃はとっとと座りやがれ!!」
バキッ
ボカッ
「「い、痛い…。」」
「酷いじゃないですか土方さん!
何もそんなに思いっきり殴る事ないじゃないですか!」
「そうですよ!それに私が毎日鍛えてなかったら、本当に私の頬骨が砕け散ってます!!」
「るっせえ!!そんなこたぁどーでもいい!!」
『頬骨が砕け散っている』
その言葉にピクリと反応したのは、近くに座っている斉藤だった。
(…………………?
いつもの月村さんの冗談か?―――いや、しかし――――)
晃の事を、斉藤は前々からおかしいとは思ってはいた。
(一度も風呂に入っているところは見た事ないし、行水をしているところも見た事はない。
変だと思ってはいたが…。何かの訳有りか?女だとでも言うか? だが現実問題として有り得ない。
#myojiさんは、沖田さんとも自分とも張り合うくらいの力を持っている上に、あの脚力…。
例え男でもあそこまでの速さを身に付けられる者はそうは居まい。 女子があそこまでの力をつける事は不可能な話だ。
――― 一体―――…。)」
斉藤が考えを頭の中で張り巡らせている最中晃と総司の喧嘩に土方も加わりずっと騒いでいたが、これから話しに加わる近藤が部屋に入ってきた。
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