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「どうして女がこんな格好して……。」
「――お前も綺麗な様相のまま成長したなぁ。」
「大人しくしてな。そしたらばれやしねぇからよ。」
気持ちが悪い。吐気がする――。
どうして、俺が、――――こんな目にッ!!
ガバッ……!!
そこで晃は飛び起きた。
―――とても、嫌な夢だ。昔の夢…。
「――どうして………今まで思い出す事なんてなかったのに…!」
障子を開けると月が輝いている。
もう少しで、満月らしい。綺麗な丸ではない月が、晃の心を少しだけ穏やかにしてくれた。
「月………綺麗だなぁ。」
暫く晃がそのまま月を眺めていると、遠くの方で隊士達の声が聞こえる事に気づいた。
「陰間くらい買うたことくらいあるわな。何事も経験やしな。」
「いつ!?聞いてへんでそんなん!?」
「1回きりや。
別におもろなかったし、大した玉でもなかったしな。
あんなんに比べたら、神谷清三郎は極上玉や!
しかもまっさらの素人やで!
この山城勘二が落とさずして誰が落とすんや!」
「………………………っ!!」
騒がしい2人の会話に悪寒がした。
どこの部分が、という訳でなく、話の内容全体に対して、である。
あの時の記憶が――蘇る――。
そこで晃はハッとして我に返った。
「――どうして……今まで思い出す事なんて殆どなくなっていたのに…!」
まだ暑さに少しも慣れていない初夏でとても暑い筈なのに、1人の時にあの事を思い出してしまうと、どうしても悪寒がする。
晃は腕を擦った。
あの事は、忘れたくても一生忘れられない………。
忘れたくても忘れられない、不愉快な思い出――。
容姿が良く生まれてきてしまったからこその、悪夢だ――。
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