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ドンッッ!!





「「「――――?!」」」

ボーっとしていて気が付かなかった。
10歳程の少年が走ってきて、突然剣心の背中にアタックしてきていた。


――が、


(ほぅ……。お手の物だなぁ。)

晃が呑気に思っていると、薫は少年を後ろから倒して奪った物を拾い上げた。

「剣心!この子スリよ!!」

そう言って少年が奪った剣心の物と思われる財布を手に持った。

「――そんなに生活が苦しいのか。」

晃は切なそうに呟くが、少年はそんな素振りを全く見せず、財布を持ち主の頭に当てて返した。

「――童、意外と平気そうだな。良かった。」

晃は安堵するものの、少年は『童』と言われて黙っちゃいない。


「俺は童じゃねぇ!!
 東京府士族明神弥彦!
 他人から憐れみを受けるほど堕ちちゃいねぇ!!
 今のはお前が一丁前に刀差してやがるからからかってやっただけだ!
 勘違いするなこのタコ!」


途中までは剣心と薫を見て言うが、最後の『勘違いするなこのタコ!』だけは晃を見て言った少年。

それに晃は一瞬驚いたが、フッと笑った。

「何笑ってんだタコ!!」
「いや、なんでもない。
 お前、弥彦だっけ?今の生活は大分苦しそうだな。
 だが、今は辛くてもいつか必ず幸せが時が訪れる事を信じなさい。それから、今の生活から抜け出せるよう、自分なりに努力するといい。
 難しいなら他人に協力を求めてみればいい。俺で良ければいつでも力になってやる。」


晃がやんわりと微笑むと、少年は「フン」と言って去ってしまった。





―――――晃が少年に対していった事――――――


―――それは、意味深い言葉だった―――


――――それがどういう意味かを知る者は、晃と剣心のみである










「結構しっかりした童だな。」

晃が呟くなり薫から文句炸裂。

「あれのどこがしっかりしてるのよ!」――とか、
「ただのひねくれ者じゃない!」――とか、
「っていうか意地っ張りなのよ!」――とか。

――しかし、晃に薫の言う言葉は全く納得できず、特に意識はせずに呟いてしまう。


「なんか、薫に似てる………?」

そんな事を言った暁には、もう晃の魂は肉体から抜ける寸前だ。




ドガァッ




「う゛…ず、ずびバぜんでじダ…。
 頼むからそこまで思いっきり殴るな…。」

薫のパンチは死ぬほど痛い。




「あ!薫!!」

殴られて謝ってから十数えたくらい後、晃が突然話しを切り出した。

「何よ。いきなりしんみりしちゃって。」
「俺、今から団子食いに行って来る!」
「え?今から?!」
「当然だ。」
「何も今から行くことないじゃない。別に明日でも――――」
「俺は今食いたくなったんだ。だから食いに行く。飯やら何やらは剣心に任せておけ!」
「せ、拙者でござるか?」
「おう!じゃ!!」
「え、ちょ、晃!!」


晃はいかにも団子を食べに行くのが楽しみだとでもいうかのように芝居をした。

だがあくまでもこれは芝居である。



「――さてと。あのガキは何処に行ったのか…。」


――果たして少年の運命は如何に――――――

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