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「………終わった…」
「サ、サスケ君?!」
「サクラッ!?」

サスケはまだ大丈夫と断言できる状態ではないが、きっとこのまま安静にしていれば大丈夫なはずだ。
だから、できればサスケに寄りかかって泣くのは避けてくれた方が良いのだが…。


「サ、サクラ!サスケは多分大丈夫!今は体が麻痺してるけど、少ししたら目を覚ますから」
「………え、本当に!?」

安心したようにまた泣き始めるサクラを見て、自分もなんだかほっとしてしまった。
サスケに寄りかかって泣くことは少しいただけないが、少しづつサスケの体も温もりが戻ってきたことだし、まあいいか。


「…ごめんね、サクラ。あたし、二人を守りに行ったはずなのに、結局こんな風になっちゃった」
「そんな事ない!私は、本当に何もしてないもの。サスケ君とナルトは成長してるけど、私は…」


ああ、この子も悩んでいるのか。
歳は違えど、悩みは同じだと思った。確か、このくらいの時も自分は同じ悩みを抱えていた気がする。
いつも隣に居たあの人だけがどんどん強くなっていったのに、自分は非力だった。
今も非力だ。医療忍者が何だと言うのだろう。
戦闘において役に立つことは間違い無いが、怪我した人を治すことしかできない。
”怪我を防ぐ”ことはできないのだ。―――もっと、強ければ。















「再不斬、お前には死んでもらう」


突然現れた声に振り向くと、雰囲気の悪い男が立っていた。
どうも、奴がガトーらしい。
なるほど高そうな服にアクセサリーにガラの悪いチンピラを従えて。
元々再不斬に報酬など支払う気も無く弱ったところを数で潰す気だったようだ。
再不斬がタズナを狙う理由もなくなったそうなので、もう彼と敵対する必要はない。
自分達もこの数ではさすがに迂闊に動けない。
カカシも結構体力を使ったはずだし、再不斬も両腕はもう使い物にならない。




「小僧、クナイを貸せ」

再不斬は白を利用しているつもりでも、やはり人だったらしい。
白が死ぬとなれば、それなりの失望感を持っていた。
鬼人と恐れられたほどの忍が、感情に身を任せて数ある敵を次々と薙ぎ倒していく。
正に、鬼としか言いようがない姿にさすがのガトーも逃げ腰だ。
いくら両腕を失おうと、鬼人からは完全に逃げ切る事はできなかった。





ガトーの首が落とされた瞬間、辺りには冷たい空気が流れ込み。
一拍置いて、悲鳴が沸きあがった。
ガトーの首が転がり落ち、それが静止した時、ついに鬼人も倒れる。
まるで役目が終わったとでも言っているようであった。



「目を背けるなナルト。必死に生きた男の最後だ」




敵ながら天晴れ。
子供の頃に学ぶ教書に載るような忍は、実際のところ中々いないものだ。
どれほど恐れられようと、やはり人としての心をしっかりと持っている。











ピクリ、と動いた手元に視線をやった。

「サスケ君……?!」
「サスケ!」

サスケの指が触れたらしい。
呼びかけの声と共に段々と開く目は、まだ焦点が合っていないようだが。


「サクラ…重い……」

どうやら本当にもう大丈夫なようだ。
サクラがまだ声を上げて泣き始めた。
タズナも、ヒカリもほっとして緊張がほぐれる。
サクラの後ろに立つタズナからは緊張が解けた溜息が漏れた。


この波の国での護衛任務、もう大したことはせず、ただ側にいるだけの任務になりそうだが。
明日からもそうだが、帰ったら真っ先に修行をしよう。
一般の任務は長期護衛任務中は少ないから、病院の仕事の合間を縫って特訓の日々だ。
そう、心に決めた。




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