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「サスケーナルトー、ご飯だってさー」
「あ、ヒカリじゃねえか!」
「お前、もう大丈夫なのか?」



呼びに行くと、まだ二人は木に登っていた。
木につけたクナイの痕が大分上まで伸びている。
サスケは元々それなりにできたようだが、ナルトは成長スピードが早い。
この分なら、そのうちサスケにも追いついてしまうだろう。


「いやー、心配かけてごめんね。もう全然平気だから!さっき街まで出かけたし」


そう言うと本当に安心してくれたらしい。
ナルトはあからさまに笑顔になるし、サスケはクールを装ってはいるが、さっきより顔が穏やかになった気がする。
もっと素直になればいいのに。
前は会うたびに”美湯ねえさん!”って言いながら笑顔で走ってきてくれたのに。
つれないやつだ。


「いやーヒカリが元気で良かったぜ! 一時はどうなることかと思ったけどな!」
「ありがとう。 ナルトとサスケがカカシを助けたんでしょ?凄いね」
「へへへーん!俺ってば火影になる男だからな!」


ナルトは元気に家に戻って行った。
自分も戻ろうと踵を返した時、後ろから声がかかった。



「なあ。お前は木に登れるのか?」
「ああ、登れるよ。昔練習したことあるからね」
「そうか…………」
「何、どうしたの?」


一体、どうしたというのだろうか?
いつも堂々としている彼が、今は珍しく俯いている。
その…、と言ったきり中々喋り出そうとしない。


「…サスケ?」
「き、木登りの、コツを教えてくれ」
「コツ……?」

なんだ、コツを聞きたかったのか。
俯いているから何かと思えば。
何だろう、この子すごく可愛い。

「ふっ…」
「な、何だよ!!」
「ごめんごめん、違うの。気にしないで。コツなら教えてあげるから」


自分が笑ってしまったことで少しムスっとしているが、そこもまた可愛い。
ポーカーフェイスを気取ってはいるが、やはりまだ十二歳の男の子だ。
小さな見栄も張りたい年頃なのだろう。
特に彼は、プライドが人より大きい。


「チャクラコントロールは、とにかく落ち着く事。強い忍は戦闘中でも落ち着いているでしょ?同量のチャクラを足の裏全体に集中させる。でもこれは慣れだから、やればやるほど上手くできるようになるはずよ。走って上まで上がれるようになれば、すぐ止まっていることも逆さまに立つこともできるようになるから」
「成る程……」


そう言うと一度自分の練習していた木を見上げた。
この木は結構高いけど、二十メートルないくらいだろうか。
もう半分は超えてるから、この分なら思ったよりも早いうちに天辺まで登れそうだ。

ふと視線を感じて視線を戻した。
今は同じ高さの目が目の前にあった。


「……?どうしたの?」

あまりに見つめられるので、身動ぎしてしまう。
目線が同じというのは不思議な感覚だ。
きっと、もう2,3年すれば追い越されてしまうだろうか。


「いや、なんとなく、俺の知り合いに似てると思っただけだ」
「…そう」


似てるって誰の事だろうか。
誰っていうか、何だか日下部美湯のことなような気がする。
ついついいつもの調子で教えてしまったし。



 
「帰ろっか」
「ああ」




先に歩み始めた彼の後姿は、なんだか前より寂しげではないような気がした。


もしかしたら、知らぬうちに彼の中に”仲間”意識が芽生え始めたのかもしれない。




少し嬉しくなって、追いついた彼の頭を思いっきり撫でてやった。




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