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「…サスケの奴さ、俺と会って大して日も経ってないのに、俺のこと敬称ナシなんだよ。
ちょっと酷いと思わない?」
「あ、そっちの話」
なんだ、そんな事か。
いや、年上を敬えないのは将来結構大変な事になるはずだ。大問題だ。
「でも、あたしもカカシの事呼び捨てじゃない?」
カカシどころか、火影に対してまでため口ではなかっただろうか。
いや、それ以前にこの里において、病院に来る患者以外に敬語を使う相手が果たしていただろうか。
あれ?これって結構な大問題なんじゃ。
火影は祖父繋がりで小さな頃から面識あるし、どちらかというとお爺ちゃんといった感じではあるが。
「そう言えばお前も最初っから敬称無かったなあ。
俺ってそんなに年上に見られない?」
「いや、っていうか、妙な本読んでる時点で敬称付ける気失せるよね」
「美湯、それ今こじつけたでしょ。
確か俺が最初に会ったのってお前が禁止マークの意味が分からない年齢じゃなかった?」
「悪い大人かどうかは、子どもには分かるのよ。純粋だから」
「なんでだろうな、まったく。ツユでさえ俺のこと”カカシさん”って呼んでくれるのに」
「あ、話逸らした」
カカシはわざとらしく溜息をつくと、食べ物を口に運んだ。
”ツユ”とは、日下部ツユのことであり、美湯の姉である。
3つ歳が離れていて、今は上忍として活動している。
昔は散々”カカシ”と呼び捨てする度両親にも叱られていた気がするが、それが無くなったのはいつからだったか。
いくら言っても一向に聞こうとしないから、きっと諦めたのだろう。
カカシを呼び捨てにする理由は、言ってしまえば”なんとなく”だが、それを上手く説明できない。
敬称を付けて呼ぶのはなんだか腑に落ちないとでも言うのか。
彼を貶しているわけでも、なめくさっている訳でもない。
頭も切れれば、体術や忍術もかなりのレベルまで達しているし、勿論他の忍からも慕われている。
父親の血を受け継いで幼い頃からエリートへの道まっしぐらの彼は、里の忍の中ではかなりの地位なはずだ。
妙な本を堂々と読んでいるような変な性格を除けば、彼のことは本当に忍の先輩として尊敬しているのだ。
やはり、性格の痛手が大き過ぎるのだろうか。
そもそも、彼がこうなってしまった原因は何なのか。
ガイの話によれば、最初に小さい頃に会った時はつれない性格だったらしい。
周りに関心を寄せず、クールに振舞う。
昔は自分の永遠のライバルの勝負にも付き合ってくれなかったものだと語っていた事がある。
やはり、幼い頃から有望な忍として厳しい戦闘への参加を余儀なくされ、その時の心の重荷から来た反動でこうなってしまったのではないか。
そう考えると、哀れみの感情さえ抱いた。蔑んでいるのではない。
いつもヘラヘラしていても、心の中ではいろいろと悩んで考えているのだろう。
子どもの頃に任務で同じマンセルを組んでいた親友も、亡くなったというし。
…ああ、なんだ。そういうことか。
要するに、
「似たもの同士だね。カカシもサスケも」
「え?俺目上の人にはちゃんと敬称付けてるし、敬語も使ってるんだけど」
「まあ頑張ってよ、似たもの同士。
あたしはそろそろ病院で仕事しないといけないから。じゃあねー!」
一応真剣な相談だったカカシは、何も解決しないまま意味の分からない言葉を言われて帰られ、また悩みが増えたとか。
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