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まだ四年前の出来事だ。木の葉の中でも有数な有名で実力のある一族、「うちは一族」があった。
美湯も、かつては「うちは」を語っていた。が、それは十一歳までの話。
それからは美湯の祖父、うちはコスイと、父、うちはイズミを中心に新しく「日下部一族」を語り、 美湯は「うちは」から「日下部」となったのだ。
何故うちはから日下部に転じたかは、うちはを離れて独立したかったというだけらしいが。
その辺りの詳しい事情があるかどうかも美湯は知らない。
苗字が変わったお陰でうちはの屋敷のある場所とはかなり距離が出来てしまったし、ひとつの一族は大きく二分されてしまった。


うちは一族特有の、それも、その一族の中でも一部にしか受け継がれない血継限界、写輪眼。
サスケはまだ写輪眼を開眼させてはいない。
だが、元はうちは一族である日下部一族になら、写輪眼をとっくに開眼させている者はいるのだ。
美湯のように。



写輪眼が欲しいのだとしたら、美湯でも事足りる。まだ開眼させていないサスケを狙っても、開眼させるまで待たなければならないのなら、なぜ開眼した者を狙わないのか。
まだ実力が不十分なサスケの方が簡単に殺れるからか。



「この間、自来也から情報が入っての。大蛇丸が、近々動き出すかもしれん。」
「…え?ああ………だからサスケか…。」



美湯達が日下部と名乗ってから三年後、あの事件があった。
サスケがまだ忍者学校に入ってから少し経った頃。「うちは一族」が、サスケの実の兄、うちはイタチによって一夜にして滅ぼされた。
そしてサスケだけが生き残り、自分を孤独にした兄、イタチをサスケは憎んでいる。

それに便乗して…なのだろう。そのサスケの恨みにつけこんで、きっと大蛇丸はサスケを自分の物にしようとしているのだろう。

確かに彼の素質は十分。
水面に立つ練習もわずか数時間でこなしてしまった奴だ。これから益々強くなる。


「まったく…。嫌なヤツ。」
「しかしのう…。」



それからしばらく黙り込んでいる火影にしびれを切らし、美湯は口を開いた。


「どうしたの?黙り込むなんて火影様らしくもない。」

あははっと笑う美湯の表情に、火影は知らないうちに強張っいた顔が少し緩んだ。
だがすぐに顔を引き締めた。

「…美湯も、気をつけるのじゃ。大蛇丸に狙われない確率も無いわけではない。 綱手から直々に受け継いだその医療忍術を欲しがる輩もおるじゃろう。写輪眼ならば尚更じゃ。」


写輪眼を狙われるなど、今更だ。
大蛇丸は確かに危険だが、共に行動することになる担当上忍によって状況は一変するだろう。



「担当上忍は誰になるの?」
「今のところはカカシを考えておる。」
「へえ。カカシか…。」

彼ほどの里有数の実力者を付けるとは、かなり厳しい任務になりそうだ。
だが…ふふふ。
奴の驚いた表情が目に浮かぶようだ。カカシには自分から言う事にしよう。



口角を上げると、火影には自分からカカシに伝えると言ってから瞬身で消えた。


火影様の表情がどこか呆れた、というか、心配そうだったのは見ていない。断じて。


「しかし面白いだろうなあ。」

一人口の緩みを抑えきれず大通りを歩くその姿が奇異の目に晒されても颯爽と歩いていくその姿。
後日談によると、かなり不気味だったそうだ。



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