From.エレン




「ここか。」

そう呟いて、一つの扉を見つめる。ここまで来るのに全く迷わなかった。それは地図があったからではない。ここまでの道のりに、なぜか不自然に隊員が配置されていて、なぜか全員が矢印の書かれた看板を下げていたからだ。いったいエルヴィンは何人を巻き込んでこんなことをしているのかと呆れてしまう。俺は中に何があるかわからないが、とりあえず扉を開けようとして―

がちゃん。

無機質な金属音が響いた。

「っち…壊せってことか…?」

そう思い扉に足をかけたところで、後ろから小さく「カギ!!」という声が聞こえた。振り返れば団員たちがこちらを物陰から見ている。こんなことに巻き込まれて、と思ってからふとペトラに渡されたカギの存在を思い出した。取り出したそれを鍵穴に差し込み、回す。かちゃん、という間抜けな音が、扉が開いたことを教えてくれた。ドアノブを回し、押す。そこで俺を待っていたのは、箱、だった。
大きな箱だ。大きさは1mくらいだろうか。

「…なんだこれは?」

よく見れば一枚のメモが貼ってあり、「リボンを切ってね」と書いてある。語尾にはご丁寧にハートマークがついていた。
人を馬鹿にしているとしか思えない。いらだつ気持ちをリボンに向けて、跡形もなく切り刻んでやった。無情な音が響いて、それとともに箱がひとりでにガタンと動いた。

…動いた?

勢いよく箱を開けば、そこにあったのは艶やかな黒と金色で。

「あ…はは、へ、兵長、」

お誕生日おめでとうございます…

そういったエレンの声は、静かな部屋によく響いた。




「…なるほど?何を思ったのかエルヴィンとハンジがお前を俺のプレゼントにすれば喜ぶと、そう思ったのか」
「はい…」

すみません、といった頼りない声。それを聞き流しながら、俺は頭の中ではだいぶ参っていた。
ハンジとエルヴィンはいったいどんな意図をもってこれを実行したんだ。
ちなみに今のエレンの状態は立体起動装置のベルトを着けた状態。ベルトを外していないところが何とも言えない気持ちになる。エルヴィンとハンジにはこの邪な思いは確かにばれていた自覚はあったが、今日の様子から考えるに班の奴らとあのキノコにもばれていた可能性がある。だとしたら、これはやはり。

(リボンを渡されたのはあれか?もう一度ラッピングしろってか?)

ハンジが聞けばおっさんくさいよリヴァイ!!と爆笑それそうな考えだが、そうとしか考えられない。エレンはこちらを恐る恐るといった風に見つめてくる。しかしその不安そうな瞳に答えてやれる余裕は今の俺にはない。思春期のガキか、と思うが、いまかなり俺は興奮してるんだと、思う。が、目を見る限り多分こいつは何もわかっていない。ということは今一時の感情で理性を流してしまえば後々こいつには消えない傷が残ってしまうだろう。そう思った俺は、最後の良心を振り絞ってエレンを部屋に返そうとしたところで、「あの」と声をかけられた。

「なんだエレン」
「あの、えっと、俺に与えられた役割は理解しているつもりです。あの、殴るなりけるなり」

兵長の好きにしてください。

それは、暴力てきな意味だとは理解している。こいつは多分自分がこれから俺のストレスのはけ口のように使われると思っての発言だとも承知している。が、しかし、今の発言は、理解だけで抑えられるものでは無かった。

「エレン」
「は、はい!!なんでしょう、え、兵長そのリボンはいったい何に使」
「好きにしろといったのはお前だからな。」

そういって俺は、責任を押し付け、理性を投げ捨てた。





Happy Birthday Revi
Marry X’mas!!


「お、俺、こんな、こんなだとは」
「…すまん、悪かった。」