From.キノコとエレンの馴染み



廊下で出くわしたエレンの馴染みが、俺を見た途端あからさまに嫌な顔をした。それはまるでゴキブリを見るかのような目で。

「み、ミカサそんな顔しない!!」
「あっひゃっひゃ!!み、ミカサの顔が、ぶっふお!!」

腹を抱えているハンジがお腹が痛いと抜かすから荒療治として腹に一発入れておく。キノコ頭が必死に謝っている姿を無駄にするように殺気立った目線を送るエレンの馴染みのその視線のおかげで気温が数度下がったのを感じた。慌てるキノコ頭に一向に視線を外さないエレンの馴染み。しかしこの空気を破壊したのはいつの間にか起き上ったハンジだった。

「まあまあミカサ。そんな怖い顔しないで。ほら、二人とも渡したいものあるんじゃないの?」
「あ、そ、そうだよミカサ!!だから、ね?」

そういってからキノコ頭は持っていたバックからしゃれた袋を取り出した。

「えっと、兵長お誕生日おめでとうございます!!これ、ブックカバーと栞で…兵長は本をよくお読みになるとハンジさんから伺いましたので…」

そういって渡された黄色い袋を思わず見つめてしまう。いったい俺の誕生日の情報はどこまで伝わっているのか。と、キノコ頭が「ほらミカサ、ちゃんと持ってきたよね!?」といったのを聞いて、まさかと思いエレンの馴染みのほうを向いてしまう。するとチッと一つ舌打ちをしたエレンの馴染みは、手に提げていた袋からごそごそと何かを取り出したかと思うと、ぶっきらぼうにそれを渡してきた。

にぼし、である。

瞬間、隣のハンジが吹き出した。「ぎゃはははは!!」というきたねえ笑い声を出しながらゴロゴロと転がりまわっている。キノコは顔面蒼白で、「ミカサなんてものかってんだよおおおお!!」といったその目には涙が浮かんでいた。たぶんこれには、キレやすいからカルシウムをとれ、という意味と、身長について喧嘩を売っているのだろう。いまだに床を転げまわっているハンジが、ナイスミカサ、とかなんとか叫んでいたので、廊下の向こう側に蹴り飛ばしておいた。

「アルミン、なぜそんなに慌てる必要があるの。こいつにふさわしいプレゼントを用意しろと言われたから私は用意しただけ。」
「ミカサアアアアアア!!」

そういって嘆くキノコ頭はまた俺に平謝りをする。それを制した俺は袋から取り出したにぼしを口に放ってやった。愉快そうだったエレンの馴染みの顔からそれが消え失せ、もう一度舌打ちをする。すると思い出したかのようにキノコ頭がバックから慌てて取り出したのは、リボン、である。

「…アルミン、それは何。」
「あー!!ミカサミカサ!!さっきサシャたちが呼んでたから、ね!!行こうか!!」
「私になにかかくして」
「あーなんかエレンについてだったようなー!!」
「アルミン、サシャはどこ。」

明らかに絆されていることをわかっていないエレンの馴染みはキノコ頭が指差した方向へと歩き出す。それを追いかけながらハンジとキノコ頭がうなずいて親指を立てているのを俺は見逃さなかった。二人がいなくなった後に「さあて私はそろそろ研究室に戻らなきゃなー!!」と言って逃げようとするのを、俺は首根っこを掴むことで防いだ。ぐえ、と蛙みてえな声がした後頭部に、俺は声をかける

「おいてめえら揃いも揃ってなに隠してやがる。」
「リヴァイリヴァイぐるじいよお"おお」

そういって喚き散らすハンジの首をより強くつかむ。すると観念したように抵抗をやめたので緩めてやればハンジはただ一言、「エルヴィンに聞いて」だった。

「リヴァイの部屋にいると思うから…ぐえ、早くはなしてよおお」
「…ほう?」

エルヴィンに洗いざらい吐いてもらおう

そういって俺は自分の部屋へと向かった。