「師匠は、クリスマスに何がしたいですか?」

あ?そりゃあ食って騒いで、それから飲む!!楽しんで何ぼだろクリスマスってやつは

「あ、そうですよね」

で?アリババは何がしたいんだ?

俺ですか?俺は、


…いえ、なんでもありません


「っうっし、今日はここまで!!」

そう声をあげてアリババに伝えれば、きょとんとした顔でこちらを見られた。言いたいことは手に取るようにわかる。なんせいつもだったらあと一時間は続けているからな。しかし俺は今日という日を逃がさない、いや逃せないんだ。案の定俺のもとへ駆け寄ってどうしてこんなにはやく、と尋ねるアリババに、俺は手招きをした。ちょこちょことお寄ってくるアリババがまどろっこしくて肩を引き寄せる。そうして内緒話をするように耳元で言った。

「今日はな、何日だアリババ」
「24日ですね。…ああ。」
「そうだ!今日は例の酒場が半額!!つまり愛しのアンディちゃんに半額であえるんだよ!!」

そういえばアリババは「なるほど…」と言って笑った。なんだよ反応わりーなと思いながらアリババに一緒に行くかと尋ねた。するとアリババは興奮したように頷く…のではなく、少し考えてから、ゆるく首を振って、いいです、と言って小さく笑った。

「んだよー…じゃあいいよ!!俺はアンディちゃんと仲良くしてくるからよー!!」

それに少しがっかりするもアンディちゃんに会いたい俺はそう言って、「じゃあな!!」とアリババに言ってさっそうとその場を去っていたのだった。
俺はその時かなり浮かれていた。
だから、俺の背中を見るアリババがどんな顔をしているかなんて、気付かなかったんだ。




「っあ"ー…飲みすぎた…」

世界が回る、とよく酒に弱いジャーファルさんがそう言っていたが、それはまさにこれのことなんだろう。ぐらぐらとする頭をたたいて俺はおぼろげな脚で自室へと向かった。

「ちくしょーアリババのやつせっかく人が誘ってやったってのによー!!」

そう小さくつぶやく。言葉にするとなぜかムカリというか、とりあえず不快な気持になった。なんでだ、と考えるもこんな泥酔した頭では何も思い浮かばない。仕方なく考えることを放棄してとりあえず憂さ晴らしに明日のアリババの稽古スケジュールを考えていると、曲がり角で小さな姿を目撃した。

「よおアラジン。どうしたんだこんなところで。」
「僕は今ヤムさんと少しお話をして、帰ろうとしていたところなんだ。…あれ?」

するとアラジンは俺の周辺を見回してから「アリババ君は一緒じゃないのかい?」といった。なぜここでアリババが出てくるのかはわからないが、先ほどの理不尽な怒りがまたこみあげてきて来たので俺はしらねーよ、稽古が終ってからわかれたしな、と、何とも大人げない声で言ってしまった。するとアラジンは「そうかい」とつぶやいて少しうつむいた。それからもう一度こちらを見やる。

「アリババ君はね、自分の正直な気持ちとか、ほしいものは口に出さないで心で留めておいてしまう人なんだ。」

突然のアラジンの言葉を理解できないでいると、アラジンは「昨日ね、」とつなげた。

「アリババ君に、明日はどうするんだいって聞いたら、「たぶん師匠と酒場に行くと思う」って言ってたんだけど、すごくうれしそうだったんだ。だからね、行ってあげてよ。きっと何かがアリババ君を心で泣かせてしまっているんだと思うんだ。」

その言葉を聞いた俺は、アラジンにろくにお礼も言わずに走りだした。アリババの行きそうなところ。自室、銀蠍塔、ほかにもたくさん回ったけれどどこにもいない。焦る気持ちばかりが先走ってしまう。どこに行ったんだと目を走らせれば、すぐそばのコテージにあの蜂蜜を見つけた。

「アリババ!!」
「っ師匠」

呼ばれて振り返ったアリババの声は情けなくて、目は少し赤かった。それらは泣いていたんだとわかるには十分すぎて、俺はアリババの肩を強くつかんだ。
言わなければ、この馬鹿な弟子に、言わなければ。

「あ、や、師匠これは」
「この馬鹿!!」

そうどなられてアリババの身体はびくりとはねた。冷たい。服越しにでも分かる体温にこちらが泣きそうになった。
どれだけ、どれだけここにいたんだろう。どれだけここにいて静かに泣いてなんだろうか。

「お前なあ、誰もかれもがアラジンとかジャーファルさんみたいに『言わなくても分かる』っておもってんじゃねーよ!!」
「し、しょ」
「俺は!!ちゃんと言わねーとつたわんねーしわかんねーの!!」

「だから」といった俺の声が情けなくて。その華奢な肩に額を押しつけた。消えかかった声で「ちゃんと言え」と言えば押しつけた肩が小さく震える。

「…んとは、一緒に行こうと思ってたんです、」
「ああ。」
「でも、師匠が女の人と一緒にいるところ、やっぱり、いやで、」
「…ああ」
「俺は、師匠と一緒に過ごしたかっ、た」
「もういい。」

悪い、そういえばアリババは小さく嗚咽を漏らす。後頭部をやさしくたたきながら、過去の俺を殴りたい気持ちでいっぱいだった。だから俺は顔をあげてアリババをまっすぐ見つめる。

「…明日は、一緒に居させてくれ。」

するとアリババは手の甲で目元をぬぐってからいやです、といった。

「明日じゃなくて、今日も、いてください。」

じゃないと、許しません。
そういったアリババを、俺は強く抱きしめた。

Give me more!!
What next, Xianyang together.