アリババ君は、サンタ、信じてますか?

「サンタ、ですか。」

はい。

「俺は信じてるんですけど、言ったら馬鹿にされるんですよ。あ、そういうジャーファルさんはどうなんですか?」

私ですか?信じてますよもちろん

「へえ、意外です!!」

そうですか?

「はい。そういうの信じてなさそうです。」

ふふ


私も、夢くらいは見るんですよ?




「どうしたんだろーね王様、緊急集会なんて」
「さあ、でもまあどうせまたくだらないことでも考えているんでしょう」
「ジャーファルさんキビシーっすね」
「まあ確かにありえるわよねえ」

聞いてきたピスティも私の言葉に苦笑いをしている。しかしあの人がこうやって私たち八人将を呼び出すときは本当に緊急を要するものか、あるいはろくでもない企みをしている時だ。そして前者はない。私の直感がそういっている。ということはやはりろくでもない考えでもあるのだろう。
季節はもう冬だ。しかし、このシンドリアには残念ながら冬の風物詩とも言われている雪は、気候のせいで降ることはない。少し気温が下がる程度しかないシンドリアの冬にも、しかしクリスマスはある。今日は12月23日、つまり明日はクリスマス・イヴである。これであの祭り好きの王が何も言わないほうが寧ろ気持ち悪い。いったいどんな事を言われるのだと思い扉に手をかけると、部屋にはそれはそれはいい笑顔のわが王が座っていた。

「やあやあ諸君よく来てくれた!!」
「あんたが緊急とか言って呼び出したんでしょうが。で、今回なんですか?」

「冷たいなあジャーファル君」という猫なで声に軽い殺意を覚える。それがわかったのかシンは慌てて仕切りなおすように咳払いをした。

「そんなこと言わないでくれ。今日はお前たちにプレゼントをやろうと思ってな。」
「へっ!?」

隣のシャルルカンから驚きと期待のこもった声が聞こえた。しかし私もみんなもこれは予想外だった。シンは驚いている私たちを見て腰に手を当てる。それから「俺からのちょっとはやいクリスマスプレゼントだ」といったのを境にピスティやシャルルカンが泣きながらシンに飛びついた。

「で、王サマ、プレゼントってなんすか!?」
「うん、シャルルカンにはお前の行きつけの飲み屋の俺特製無料券だ。これを見せれば24、25はタダだぞ。」
「ぃやっほおおおおおいありがとうございます王サマ!!」
「私は私はー!?!?」
「ピスティには洋服だ。前に自分のサイズは店に王手なくてオーダーだから面倒だと言っていただろう?」
「やったーありがとう王様ー!!」

次から次ふと出てくるプレゼントの数々。ヤムライハには花の髪飾り(ヤムライハはかわいいんだから云々とほざいていた)ドラコーンには奥さんとのアルテミュラ方面のへの旅行券(たまにはゆっくりしてこい、だそうだ)ヒナホホには、スパルトスにはシャルルカンと同じく無料券を(これは確実におせっかいだと思う)、マスルールには肉を渡していた。(肉だ。加工も施されていないただの肉だ。マスルールは目を輝かせて喜んでいたが。)皆が皆よろこんで受けとっていたのを暖かく思いながら見守っていると、シンが「それから」と言って私のほうを向いてきた。

「ジャーファルには、今から明日まで休日としよう」
「えっ」
「よかったじゃないっすかジャーファルさん!!」
「ですがシン」
「おっと断らないでくれよ。俺からのささやかな気持ちだ。」

強いて頼むなら、と、シンがいってから私に一つの紙袋とメモを渡してきた。ニコニコと気味悪く笑うシンを怪訝な目で見てからメモを開く。中に書いてあった内容を見て思わず吹き出してしまった。

「…なるほど。」

そういうことですか。



「…で、シンからの話によると、アリババ君のプレゼントがこういったわけなんですが?」
「…シンドバッドさんの馬鹿…」

言わないって約束したのに。そういったかわいらしい声を出したアリババ君だが、私から言わせてみれば欲しいモノが手に入ってこそのクリスマスだ。むしろアリババくんがほんの少しでもわがままを言ってれて嬉しく思う反面、私に直接居てくれれば良かったのにと思ってしまう。

「さてアリババ君。私がシンから仰せつかったメモには、アリババ君のお願いをかなえてあげてくれと書いてあったんですよ」
「えっ」
「ですから、私にお願い、言ってくれませんか?」

君の口から直接聞きたいんです。そう言ってアリババ君の手をそっと包み込んだ。努力をした手だ。それでいてきれいな。アリババ君は少し私から目線をはずしてからおずおずとこちらを見つめて、口を開いた。

「…ジャーファルさんと、一緒にいたいです。」

その言葉を聞いて満足した私は、アリババ君の耳元でお決まりのセリフをささやいてからそのかわいいことを言ってくれる口に、口づけを落とした。

「メリークリスマス、アリババ君。」



I want you!!
Do not need anything else!