竹谷八左ヱ門の話



やっと回ってきた自分の番、ということで少し緊張気味だった俺だが、なまえや皆を怖がらせることを目的に怖い話をしたいと思う。・・・と言っても勘右衛門みたいに実体験なんてないし、雷蔵や三郎みたいに色んな怪談を知ってるってわけじゃないから少し在り来たりな話になるのだが。


「これは俗に言う都市伝説なんだけどさ、“さとるくん”って知ってるか?」

「さとるくん?」

「あぁ、○怨のあの子?」

「いやいや、そうじゃなくて!っていうか名前違うだろーが!」


確かに呪○のあの男の子も三文字の名前だけど、俺がする話とは全く関係はない。なんせ今から俺が話すのは都市伝説のさとるくんの話だ。

“さとるくん”は小学生の男の子の幽霊なんだけど、その子を呼び出すとどんな質問にでも答えてくれるらしいんだ。それでさとるくんを呼び出すのには決まった方法があるんだけどさ。

必要な物は十円玉と公衆電話、そして自分の携帯電話。まず、公衆電話に十円玉を入れて自分の携帯に電話をかけるんだ。
そして繋がったら「さとるくん、さとるくん、いらっしゃったらおいでください」と言ってそのまま電話を切る。そうすると、24時間以内にさとるくんから自分の携帯に電話がかかってきて、電話に出るとさとるくんが今居る位置を知らせてくるんだってよ!それでその電話が何回も続いてさとるくんが居る位置がどんどん自分に近付いて・・・


「それメリーさんじゃね?」

「俺も思った。何かメリーさんっぽいよね!」

「ちょ、黙って聞けよお前ら!」


話の腰を折る三郎と勘右衛門を注意しながらも、他の三人が俺の話を聞いてくれていることを確認して話を続けることにする。

それでさとるくんから最後の電話がかかってくるんだよ。「今、君の後ろに居るよ」ってな。このときに質問をすると、さとるくんはどんな質問にも答えてくれるんだよ。


「じゃあテスト範囲とか?」

「もしかして豆腐の美味しい店とかもか?」

「まぁ、何でもってことはそうなんだろうな・・・」


なまえと兵助が嬉しそうに目を輝かせながらそう言うのを聞き流しながらも、俺はこの話で一番重要な部分を話すことにする。

だけど気をつけなきゃいけないことが2つある。このときに後ろを振り返ってしまったり、さとるくんにする質問が決まっていない場合はさとるくんに“あっち”の世界に連れて行かれるんだとよ。




「・・・それだけ?」

「え?」

「いや、前三人の話が長くて怖かったからさ。竹谷の話もまだあるのかな、って思って」


俺自身的には凄く怖い話をしたつもりなのにも関わらず、なまえや三郎、そして兵助や勘右衛門までもが俺の話を聞いて少ししらけてしまっていた。唯一の救いは雷蔵がさとるくんに質問する内容を延々と悩み続けていることだ。

この雰囲気を何とかしなければ、と思った俺は小学校の頃に流行った都市伝説について話すことを決めた。


「こ、これで終わりなわけないだろ?まだとっておきのやつがあるんだよ!」

「流石はっちゃん!待ってました!」

「どんな話か楽しみなのだぁ」

「言いだしっぺ2がアレだけだと面子立たないもんなぁ」

「ハチ頑張れ!」


怪談を話す場で何故自分が応援されているのかわからないが、何とか怖い雰囲気を作りながら話すことを心がけようと思う。というか、取り合えず雷蔵はさとるくんの話から離れてくれ。そう思いながら、俺は次の怪談を始めることにする。



昔“リング”って映画流行っただろ?実はあの映画に出てきた“貞子”についての話なんだけどさ、映画見たことある人ならわかるけどアレってビデオ見ちゃった人のところに誰かから電話がかかってくるだろ?アレって誰がかけてるのか気にならねぇ?


「まぁ、言われてみれば幽霊が電話持ってるわけないもんね」

「それがさ、持ってるんだよ」


0X0-4444-44X4って番号なんだけど、この4が並んだ不吉な番号が実はその“貞子の電話番号”なんだ。実際にこの番号にかけてみればわかるんだけど、受話器の向こうからボォーーーーっていう気味の悪い音が聞こえるらしいんだ。
それで、この番号にかけた人は1週間以内に事故に遭うっていう噂なんだってよ。


「まぁ貞子が携帯持ってるなんてあり得な・・・」

「それ、僕知ってるかも」


怪談を話し終え、締めくくりの言葉として携帯を持ってるなんてあり得ない話だけどな、と言葉を続けようとした瞬間、それまで黙っていた雷蔵がいきなり呟くように口を開いた。勘右衛門やなまえは雷蔵を興味津々な様子で見ていて、この怪談が嘘だと思っていた俺自信も次に続く雷蔵の言葉を待った。


「それさ・・・えっと」

「雷蔵、迷わずに話してよ」

「そうだよ、今日気になって眠れなくなっちゃう」

「えっと、その・・・」


勘右衛門となまえの声を聞くも、言おうか戸惑っている雷蔵を見かねたのか、隣でニタニタと笑っていた三郎が「ハハハ」という笑いと共に雷蔵が言いたかったであろう真実を口にした。


「それ、本当は貞子の電話番号でも何でもなく、携帯会社同士の通信用の番号なんだよ。因みにその番号に電話しても呪いなんてかからないし、課金もされない。なぁ?雷蔵」

「う、うん・・・実はそうなんだ。ハチ、ごめんね」

「いや、本当のことは俺も知らなかったから逆にスッキリしたけど・・・」


何でも三郎と雷蔵は小学生の頃この怪談を知り、二人で実際に電話をかけてみたことがあるそうだ。小学生なのに行動力ありすぎだろ、なんて思いながらその話を聞いていると、その間黙っていた兵助が突然何かを思いついたかのようにポツリと話しだした。


「確か同じ数字が続く電話番号って“良番”って呼ばれていて1000万円くらいの値段で取引されてるらしい」

「マジで!?」

「貞子の話よりもその方が吃驚したよ」


雷蔵、三郎、兵助の発言により、独擅場だと思ってたはずこの状況が何故か和んでしまい、怪談をする雰囲気ではなくなってしまってることに気がついた俺は内心ため息をついた。あぁ、やっぱり俺って話下手なのかな。そう思っていると、俺の次の話し手であるなまえが俺に向かって笑顔で話しかけてきた。


「竹谷のお陰で怖くなくなったから嬉しいよ、ありがと」

「いや、俺は別に怖くない話をしようなんて」


思ってない、そう言おうとした瞬間、なまえはさっきの笑顔が嘘であるかのような真剣な表情で口を開いた。


「これは私が実際に体験した話なんだけどね・・・」


おいおい、いきなり始めるのかよ。とは思ったのは俺だけではなく、その場に居た4人もなまえの様子を伺った。が、何故かその状況につっこめるような空気ではなく俺はそのままなまえの話を聞き続けることにした。

午後6時25分、俺達の怪談話はまだ始まったばかりだ。

110828

by「都市伝説さとるくん」「都市伝説貞子の電話」
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