「あ、なまえ、唇の端切れてる」


そう言うと、勘ちゃんは私の唇に触れた。勘ちゃんの中性的な見た目に反して、意外に骨ばった低体温の指が突然唇に触れたことでドキドキと胸が高鳴る。


「あぁ、何かいつのまにか切れちゃったみたい。醤油とかレモン食べたら沁みて痛いんだよね」


胸の高鳴りがバレないよう冷静を装って笑顔を浮かべ、あははと笑いながら勘ちゃんの手から逃げようとするものの、何故か勘ちゃんは私の唇から手を離そうとしない。
それどころか、唇の端の傷の上を爪や指の腹で軽くなぞり出した。


ピリリと小さい痛みが私の身体に走る。けれど、それ以上に勘ちゃんが私の唇に触れているという現状や少しずつ近くなっているように感じる勘ちゃんの顔に私は胸の高鳴りを止められずにいた。

普段はただの仲の良い友達としか思っていないはずの勘ちゃんが何故かとても男らしく、そして色っぽく見え、思わず視線を逸らしてしまう。


「あはは、痛かった?」


すると、勘ちゃんは悪戯が成功した子どものような笑顔を浮かべて、私の唇から手を離した。


離された手にホッ、と胸を撫で下ろしたのも束の間、私の頬は勘ちゃんの手によって固定され、次の瞬間私の唇と勘ちゃんの唇が重なり合った。



「んっ・・・」


現状が把握出来ずに、されるがままに浅い口付けを繰り返していると、突然身体に電気が走るようなピリリとした痛みが私を襲った。


痛みの正体はまぎれもなく勘ちゃんの舌で、その舌はというと、私の唇の端の傷を優しくなぞったかと思えば、今度は傷口を抉るかのように舌先で激しく突いたりなど、不規則な動きをしながら私の反応を見て楽しんでいた。


「んっ、んっ・・・」


もちろん拒否の意を示すために唇を離そうとするものの、勘ちゃんの舌は次に私の舌を探し当て、逃がさないとでも言うかのように舌同士を絡め合わせた。

まるで恋人同士がするような深い口付けの嵐に頭が真っ白になり、流れている時間の間隔がわからなくなった頃、勘ちゃんはようやく唇を離した。


「はぁ・・・っ、何すんのよ、馬鹿」


深い口付けによって上がった息を整えながらそう言うと、勘ちゃんはしてやったりというような意地悪な笑顔を浮かべた。


「これで痛いの治ったでしょ?」


その笑顔を見た私が、苛立ちのあまり殴ってしまったのは言うまでも無い。



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