「今日寒いのにマフラーとか手袋忘れちゃったんだ。本当最悪ー」


隣を歩いていたなまえは寒いのか両手をこすりあわせながら突然そう言いだした。朝やっていたテレビの天気予報では確か今日の最高気温は4度だといっていたような気がするが、そんな日に防寒具を忘れるだなんて一体何をやっているんだと思いながらもなまえの様子を伺う。

「最悪」だとか「何で忘れたのかな」とか何とか愚痴りながらも手が温かくなるように手をこすりあわせたり服の袖の中に手を入れたりしているなまえがまるで小動物のように見え、無性に抱きしめてやりたくなる衝動に駆られた。

しかし街の中で突然抱きしめるようなことなんて出来るわけがなく、俺は勇気を出してポケットにつっこんでいた手をなまえに差し出した。



「なっ・・・なら、俺が温めてやるよ」



思ったよりも上ずってしまった自分の声に驚きながらなまえの反応を見ていると、なまえも俺の突然の言動に驚いたのか目を見開きながら俺を見た。そして口をにんまりとさせたかと思うと、


「ぶっ、竹谷何いきなり臭いこと言ってんの!」


「てんめ、俺の折角の好意を・・・」


声をあげながら俺へと指を差して笑った。ケラケラと笑いながら俺をからかうなまえに思わず反論しようかと思ったのと同時に、なまえはそのままの笑顔ではにかみながら俺に手を差し出した。



「ほら、」


「え・・・」



突然目の前に差し出された手に、今度は俺が目を見開いていると、なまえは視線を逸らしながら恥ずかしそうに、俺にしか聞こえないほどの小さい声で呟いた。



「・・・手、温めてくれるんでしょ」


「お、おう!」



そう言ってなまえの手を握ると、俺が想像していたよりも冷たい手の温度が伝わった。俺と手を繋いだくらいで温まるんだろうかと思いなまえを見ると、そんな俺の気持ちが伝わったのかなまえは俺の手を強く握ると楽しそうに笑った。


「・・・全然寒いけど、ありがとう」


「・・・どういたしまして」


俺をからかうような口ぶりだったが頬を染めながらそんなことを言うものだから、こっちまで恥ずかしくなり思わず繋いだ手を強く握り返した.



121105
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