※年齢操作+現パロ


「なまえちゃん、眉間に皺寄ってるよ」

「・・・」

そう言うと三治郎は眉をハの字にさせて私の視線の先を見た。どうやら最近私は不機嫌らしい。理由は言わずもがな今現在も私の視線の先に居る加籐団蔵のことである。時というものは残酷だ。昔は可愛らしかったアイツも今となってはただの男臭くて煩い馬鹿になってしまった。字が汚いのは相変わらずだが。


「加藤くんってかっこいいよね〜」
「会計委員なのにちょっと可愛いところが良いわよね」
「頼れる男って感じがして見てるだけでドキドキしちゃう!」

しかし恋する乙女というものはそんな馬鹿の欠点さえも魅力の一つに数えてしまうらしい。恋は盲目とはよく言ったものだ。同じクラスの金吾や兵太夫がモテているのは昔からのことだが、何故、どうして団蔵がモテるのだろうか。試行錯誤の結果直接本人に聞いてみたところ、

「なんだよ、ヤキモチか?俺がモテるのは昔からじゃん!」

と憎たらしいほど爽やかな笑顔で返された。因みにその時の私の反応は「馬鹿じゃないの、アンタ自分の卒業アルバム見返してみなよ」である。我ながら酷いとは思うが当然の結果である。そんなことを私の友人でもありアイツと同室の友人、佐武虎若に相談したところ「団蔵は照れ屋なんだよ」とわけがわからないことを返された。腹が立ったから彼らの部屋の散らかり様(庄左ヱ門から手に入れた情報である)を掃除名人の伊助に教えてあげた。


なんていうくだらない回想をしていると、何も言わなくなった私を心配したのか三治郎は教室の窓側でアイツと楽しげに話していた兵太夫を大声で呼んだ。呼ばれた兵太夫は私と三治郎の元へやってきた。


「なまえちゃんが悩んでるんだって」

「え、何どうしたの?」

「僕じゃ話しにくそうだったからさ、兵太夫がなまえちゃんの話聞いてあげてよ」


ドSだなんだと言われていても何だかんだで優しい兵太夫は三治郎の言った悩みを私に尋ねるが、何故だろう。この二人の目からは新しい玩具を見つけたとでもいうような輝きが放たれていて、つい本当のことを言ってしまうとそれはもう悲惨な結果になりそうなことこの上なかった。そもそも私が悩んでいるのではなく、不機嫌なだけなのだ。
どうやってこの二人を切り抜けようかと頭を回転させていると、それを見ていたであろう救世主が私たちの会話に参加した。


「何、なまえがどうかしたの?」

「・・・それが何か悩んでるんだって」

「何だよ、何かあったのか?」

「べ、別に何もないよ」


現れた救世主もとい加藤団蔵のお陰で二人からは切り抜けられたが、また別の問題が出来てしまった。何故不機嫌の原因がそ知らぬ顔して出てくるんだ。因みに私の不機嫌の理由が団蔵だと気付いているであろう二人は私と団蔵の反応を見て悪魔の如く笑っている。くそう。


「それよりさ、俺今日呼び出しくらっちゃったんだよ!どうしたら良いかな?」

「・・・へぇ。良かったじゃん。さぞ可愛い子なんでしょうね。勝手に付き合えばいいじゃん」

何がそれよりさ、だよ。友達が悩んでるって聞いたのにそれよりも自分の自慢ですか。何だお前は何様だ。そんな私が言った言葉で悪くなった雰囲気を悪魔二人も感じ取ったらしい。


「団蔵お前なぁ、」

「なまえちゃん落ち着いて」

と私たち二人を宥めようとしている。が、団蔵も私の言葉にカチンときたらしい。笑ってはいるが苛々しているような口振りだ。


「何だよ、ちょっと機嫌悪いからって俺に当たるなよ」

「・・・」


私と団蔵のただならぬ雰囲気を察したのか金吾や喜三太などのクラスの友達がわらわらと集まってくる。兵太夫と三治郎は私と団蔵を宥めるのを諦めたのかジッと傍観している。何も言わない私を団蔵がどう思ったのかは知らないが私が文句を言い足りないことには気付いたのだろう。


「言いたいことあるなら言えよ」

「わ・・・私の方がずっと前から団蔵のこと見てたんだもん!」

「は、」


拍子抜けしたとはまさにこのことだろう。今まで張り詰めていた空気が私が言った一言のせいで一瞬にして和らいだ。状況をわかっていない団蔵は元々マヌケな顔をもっとマヌケにして馬鹿みたいに考えている。そこで私はあることに気付いた。ここは教室であり私たちの周りには兵太夫と三治郎を含め沢山のクラスメイトが集まっている。ということは、今の私の言葉は全員に聞かれていたということになる。しかも今の言葉は誰が聞いても、


「・・・っ、うわああああああああ」


バタンと教室の扉を開けると、私はすぐさま教室を飛び出した。・・・取り合えず保健室にでも行って乱太郎とついでにしんべヱときり丸に愚痴りに行こう。


「それでさ、聞いてよ!団蔵の奴なんて言ったと思う?“俺今日呼び出しされたんだ”だって。何がそんなに嬉しいんだか。ちょっと昔より男らしくなっただけで女の子に声かけられて馬鹿じゃないの?ね、そう思わない?ってか思うよね?」


保健室の扉を開けるとそこには予想通り乱太郎ときり丸しんべヱの姿があった。都合の良いことに庄左ヱ門も居たので4人全員に愚痴ることにする。有無を言わせないほどのペースで話し続けていると、4人は仕方ないなといった感じで静かに私の話を聞いてくれた。というもののきり丸としんべヱには話を聞く条件として予め食堂の食券2枚を渡しているので口を挟むのは乱太郎と庄左ヱ門のみであり、またこの二人は人の話に首を突っ込むタイプではないので必然的に私だけがペチャクチャぐちぐちと話しているのだった。


「あーもう腹立つ。何なのあの馬鹿!人の気持ちも知らないで・・・」

「馬鹿で悪かったな」


私の背後にあった保健室の扉がガラガラと勢い良く開いたと思ったらそこには私が逃げてきたはずの張本人、加藤団蔵が息を切らしながら私の言葉を遮った。後ろにはさっき教室に居たいつもの面々が勢ぞろいしている。何だこの新しい拷問は。何を言おうかと考えている間にも私の憎たらしい口は思っても無い言葉を放つ。


「何よ、こんなとこまで来て・・・文句言いに来たの?」

「・・・俺だって」

「・・・?」

「俺だって昔からなまえのこと好き・・・なんだけど」

「・・・はぁ、」


何を言っているんだコイツは。教室から一緒に来た三治郎たちは何となく流れを知っているのだろうが、保健室に居た私は開いた口が塞がらないといった状態だ。何がどうしてこうなった。状況がまったくの飲み込めず固まっていた私に声をかけたのは三治郎だった。


「良かったね。これで不機嫌治ったでしょ?」

「まぁ僕と三治郎にかかればこれくらい楽勝だしね」

どういうことだ、これは。固まる私をよそに回りの皆はあはははと笑っている。ちょっと待って説明しろお前ら。

「・・・三治郎サン、ドウイウコトデスカ?」

「あはは、なまえちゃんすっかり騙されちゃったね」

「・・・?」


要するにまとめると、私のことを好きだけど告白する勇気がない団蔵が兵太夫と三治郎に相談したところ、「僕らに任せてよ!」と告白大作戦を立てそれを実行に移ったのが今日ということらしい。何だソレ。というか悪魔二人はやっぱり悪魔だったのかと思いながら少しため息を吐いていると、元凶である団蔵が私に話しかけた。


「虎若に・・・最近なまえが機嫌悪かった理由聞いて、それで兵太夫と三治郎に協力してもらったんだよ。・・・悪かったな」

「私の方こそ、酷いこと言ってごめん」


恐らく虎若は部屋の件を私に仕返ししたつもりだったのだろう。ところが話は団蔵だけに留まらず兵太夫三治郎と飛躍し、私に伝わった頃には全て解決した後だったということか。よし、今度喜三太の飼っている蛞蝓を虎若のベッドに放ってやろう。そして喜三太、団蔵、伊助の三人に怒鳴られるが良い。私は知らん。







「それで、二人は付き合ったの?」

「へ、」

そんなことがあったことを、その場に居なかった伊助に報告していると今まで自分では気付いていなかったことに気がついた。そうだ、お互い気持ちは伝えたものの恋人にはなっていないのだ。あの後も皆の前だったこともあり何の進展もないまま解散となったのだった。あぁ、何ということだろう。

「わ、忘れてた・・・!」

「だと思ったよ。なまえも団蔵も変なとこで奥手だからなぁ」

「伊助、どうしよう」

「大丈夫、僕も今からアイツらの部屋に行くから一緒に来れば良いんだよ」

「え、それってもしかして」

嫌な予感がひしひしと伝わる。伊助が虎若と団蔵の部屋に行く理由なんて一つしかないだろう。逃げようとした時にはもう遅かった。伊助は私の襟を掴むと、楽しそうな表情を浮かべてこう言った。

「なまえが二人の部屋の様子を教えてくれたんだから一緒に掃除しなきゃね」

「ちょ、あああああああああああ」



110429
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