「・・・どうしたんですか、その頭」

「なまえ先輩!」

「あ、なまえちゃん!」


教室の掃除当番だった私はいつもより少し遅れて委員会に到着した。するとそこには何故か髪の毛をお団子の形に結い上げた火薬委員の人たちの姿があった。


「皆で暑いね、って話してたらタカ丸さんが結ってくれたんです!」


似合いますか?と目をキラキラと輝かせる伊助の髪型は至ってシンプルで、でもどこか可愛らしさがあるものだった。


「伊助すっごい可愛いよ!あと三郎次もお団子似合ってる!」


伊助と話す私を恥ずかしそうに見ていた三郎次に向かってそう言うと、三郎次は顔を赤らめて「そんなことないです!」と否定した。あぁ本当下級生って可愛いなぁ。


「タカ丸さんは・・・似合い過ぎて怖いです」


恐らく自分で結ったであろうタカ丸さんの髪型は、伊助と同じシンプルなお団子にもかかわらず何処か華やかさがあるものだった。流石アイドル学年。


「え〜そうかなぁ?もっと可愛くしたかったんだけど暑くてね」

「そうですか・・・えっと、久々知先輩は、」


言葉を詰まらせた私を責めないで欲しい。だってこれは卑怯だ。
いつも腰まである長い黒髪を頭の上でお団子の形にきっちりと結い、少しだけ後れ毛を垂らした久々知先輩は元々顔が整っているということもあり、まるで女の子のようだった。というか女顔負けの出来映えだった。


「兵助くん髪長いから俺も楽しくって、張り切っちゃったんだ」

「斎藤が結ってくれたんだけど思いの外涼しいぞ。なまえもやってもらえばどうだ?ほら、斎藤」


髪をお団子に結い上げて楽しそうに話す二人はさながら可愛い女の子のようだ。顔だけは良いんだもんなぁ、この委員会。そう思って二人を見ていると、何を思ったのか久々知先輩はタカ丸さんに私の髪を結うよう促した。


「お気持ちだけ受け取っておきま・・・」

「なまえちゃん暑くないの?それとも俺に結われるの嫌?」


完成度の高い委員会で私も同じように結うのは少し気が退けたので断ろうとすると、しゅんとして元気を無くしたタカ丸さんが私にそう問いかけた。


「そういうわけじゃ・・・」

「じゃあ、僕たちと一緒なのが嫌なんですか?」


悲しそうな表情を浮かべた伊助や三郎次が私をじっと見る。隣には同じような表情を浮かべたタカ丸さんと、諦めろといった様子の久々知先輩。これ絶対久々知先輩私を巻き添えにしたいだけだよね。


「〜・・・タカ丸さんお願い出来ますか?」

「うん!可愛くするから任せてね!」


私の言葉を皮切りに4人は楽しそうな表情を浮かべると、私の髪をどう結おうかという話で盛り上がり始めた。・・・うん、取り敢えず誰か委員会活動しませんか。



暑い夏の涼み方
(火薬委員は髪を結い上げます)

110625
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