「ねぇ、前世って信じる?」
いつものように部屋の中でくつろいでいると、突然彼女が思いもしなかったことを口にした。
「いきなりどうしたの?」
冷静を装いながら問い返すと、彼女は僕のその返事を待ってたかのように嬉しそうな表情をしながら最近手に入れた情報らしいソレを話し出した。
「あのね、友達に聞いた話なんだけどさ、初対面なのに何故か相手のことを怖がっちゃったり寒気を覚えたりすることってあるじゃない?」
「あぁ、確かにあるかもね」
それが何故前世の話に通じるのか分からずにいる僕に、彼女は何故か自慢気な態度で話を続ける。
「で、それってさ、その相手が前世で自分のことを殺したからなんだって!ね、凄くない?」
「あはは、それは有り得ないよ」
驚くと思っていた僕の反応が薄いどころか自分の話を否定するものだったことに少し不満気な彼女は恨めしそうにしながらも僕が否定した理由を尋ねた。
「そんなのわかんないじゃん!伊作はどうして嘘だって思うの?」
「あはは、それは秘密」
彼女の問いをあからさまに流した僕が気に入らないのか彼女はさっきよりも不満気な声で「何それ、気になる!」と騒いでいる。本当ならここで真実を話しても良いんだろうけど、僕は"前世"のことを誰にも言うつもりはないので口を閉ざしておく。
(それは僕が君を殺したからだよ、なんてね)
110927