「お前が弱いんじゃない、私の方が強かった。ただそれだけだ」


そう言うと男はギラギラとした目を今まで以上にカッと見開き、目の前に居た敵に向かって苦無を突き立てた。

その間まさに数秒。少しの抵抗すらすることもなく、目の前の敵は男の手によって動かないものとなった。


ここは戦場だ。殺さなければ殺される。それがこの場での常識であり、男は当然のことをしたまでだ。けれど、あまりにも壮絶な光景に目を疑ったのも確かだ。


「なまえ、」

「は、はい!」


男は、たった今人を殺したとは思えないほどにはっきりとした声で私の名前を呼んだ。驚いた私が焦った返事を返すと、男は私の心が乱れていることがわかったのか、先程敵の息の根を止めた方の手で私の頭をわしゃわしゃと何度か撫でた。


「心を殺せ、とまでは言わない。しかし恐れることは何もない。そうだろう?」


太陽のような笑顔が私に向かって笑いかける。 それを見ていると、先程感じた男への恐怖や戦場に居ると必然的に味わう血生臭さが全て嘘であるかのように感じた。それと同時にこの先何があっても、この男・・・つまり七松先輩が居る限り恐れることは何もない、そう思えたことも事実だった。


120114
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