※他版権キャラ名前有り。とんでも。


俺の彼女は所謂ヲタクだ。漫画やアニメ、児童文学から普通の小説など様々なジャンルに手を出しては色んな男キャラクターをかっこいいだのなんだのと騒いでいる。

仮にも彼氏である俺の目の前で、○○くんがかっこいいだの好きだのとキャッキャと黄色い声を上げるなまえはまるで恋をする乙女のようで、例え相手が二次元であっても彼氏としては見ていて面白いものではなかった。


「あー本当リーかっこいい。世間ではサブキャラだけどね、私の中では本当に主要人物だわ!映画でも小説でもかっこよすぎる!」


今日は世界的に有名な某魔法ものの生徒にお熱らしい。丁度放映されている映画を見て楽しそうに顔をニヤけさせるなまえを見ていると、ひどく腹が立つ。
というか、この間までアラジンみたいな他のジャンルにハマっていたと思うのだが、飽きっぽいにもほどがあるだろう。


「お前、この間まで言ってた何とかはどうなったんだよ」

「カシムね!勿論好きだよ!切ないしかっこいいし男っぽいし!たまらないよね!でも今はリー!」

俺には一切目も暮れずにそう言い放ったなまえに俺のイライラゲージが上がっていくのがわかる。
俺の機嫌が悪くなってるとは露知らず、なまえは穴が開くほどに目を熱く、そしてキラキラさせて楽しそうに画面を見つめている。


「うわぁー!かっこいいー!ねぇ、勘ちゃん見た?今の!」

「あ・・・

「ほらほら!凄いー!」

「・・・」


やっと俺に話しかけたと思ったら、すぐに画面に目を戻し映画の世界に没頭し始めるなまえ。あぁ、また俺のイライラゲージが上がった。あとちょっとでMAXになりそうだ。
そうは思うも、まさか二次元に嫉妬してるような小さい男だなんて思われたくないのでイライラしているのがバレないように冷静を装う。


そうこうしている間にやっと映画が終わり、ホッとしている俺の隣でなまえはつまらなさそうに口を尖らせる。そんなに映画が好きなのか。そんなに魔法の世界が好きなのか。彼氏であるはずの俺を差し置いてよくわからないリーとかいう男が好きなのか。とうとうイライラゲージがMAXになり我慢が出来なくなる。もう小さい男だとか関係ない。


「なぁ、リーって奴そんなかっこいいの?」

「うん。私は好き!」

「・・・この間のカシムって奴も好きなの?」

「え、うん。何で?」


我慢出来なくなって話を切り出したものの、改めて思うと二次元に嫉妬って情けない。そう思うと突然何も言えなくなる勇気のない俺。


「・・・別に、何でもないけど」

「・・・」


そう言って視線を逸らす俺を不思議そうに見つめるなまえ。さっきまで俺を見てほしかった目がじーっと俺を見ていることに嬉しい反面、何故だかとても恥ずかしくなってくる。


「勘ちゃん、」

「何・・・」


さっき画面を見ていたのと同じようで違うニヤニヤ顔で俺を楽しそうに見つめるなまえ。


「私が何でリーやカシムが好きなのか知ってる?」

「・・・知るわけないじゃん」


俺が嫉妬しているのをわかっているのかわかっていないのかわざと話を掘り返すなまえは何故だかさっきよりも楽しそうで俺をからかっているんだなと一目でわかってしまう。・・・それでもさっきまで相手すらしてもらえなかったことを考えると嬉しく感じてしまう自分が末期だなと思う。


「あのね、」

「・・・」

「勘ちゃんに似てるな、って思ったから好きになったんだよ」

「え、」


いきなり爆弾発言をしたなまえに呆気を取られる。今こいつは何て言ったんだ。俺に似てる?そう言われなまえが好きだと言ったキャラクターを思い返す。リーとかいう奴はドレッドヘアで主要人物である双子の友人であり、カシムとかいう奴は確か丸っこい髪型でそれでドレッドヘアで・・・お前ただ俺と似てる立ち位置の丸っこい髪型してる奴が好きなだけなんじゃないかとなまえの男の趣味に疑問を抱いていると、そんな俺の視線に気付いたのかなまえはアハハと笑い声を上げた。


「そういう見た目だけじゃなくてね、友達や仲間思いで、自分の大事なもののためなら自分自身でさえも犠牲に出来ちゃえそうなとこが何か勘ちゃんに似てるなぁ、って思ってさ。まぁ勿論見た目で惹かれたのもあるけどさ」


そう言って恥ずかしそうに笑うなまえに、さっきまでMAXだった俺のイライラゲージが嘘のように消えていく。その代わりに恥ずかしさで顔が火照っているのは誰が見ても間違いないだろう。そしてそんな俺に止めを刺すかのようになまえは聞こえるか聞こえないくらいの小さい声でこそっと呟いた。


「あと、私が愛してるのは勘ちゃんだけだから・・・」


・・・そんな殺し文句を言われたら、これからなまえが好きになる二次元のキャラクターにだって嫉妬出来なくなってしまう、なんて思いながら照れを隠すようになまえを抱きしめた。



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