「三郎」


「何か用か?」


私が名前を呼ぶと、雷蔵の姿をした三郎がこちらに顔を向けた。


「何でもない。呼んでみただけー」


「・・・馬鹿じゃないのか」


「あれ、もしかして照れてる?」


「・・・うるさい」


どうやらいきなり名前を呼ばれたのが恥ずかしかったらしく、三郎はすぐに私から目を逸らした。それを見た私は、追い討ちをかけることにする。


「三郎、三郎、」


「・・・何だよ」


「えへへ、好き」


私の言葉を聞いた途端、自分の耳を赤くさせた鉢屋は私の額に軽くデコピンをすると、いつものような意地悪い笑顔を浮かべた。


「・・・馬鹿だな。私の方が好きに決まってるだろ」



140512

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