何故かいつもより少し早く鳴った目覚ましに少し苛立ちながらも数分くらい布団の中で眠気と格闘する。いつもは遅刻ギリギリの時間に起きるのにもかかわらず何で今日は目覚ましが早く鳴ったのか、それよりもそろそろ起きなければ、そう思いながらも布団の中でゴロゴロしていると、ようやく今日は自分が保健委員の朝当番であり、そのために目覚ましを早く鳴らすようにしていたことを思い出した。


「ち、遅刻だ!!」


そう叫びながら急いで朝の支度をし、10分もかからずに家を出る。最初のうちは走っていたものの、自分が学校まで走りきる体力がないことは百も承知なので走りから早歩きに切り替える。あぁ、昔はこんなんじゃなかったのになぁ、なんて思ってみるものの今の自分に出来ないことは仕方ない。
何を隠そう私には俗に言う前世というものが見えるのだ。

それは自分のことに関してもそうだったし、恐らく前世で仲が良かったであろう友人たちのことも覚えていた。例えば自分のことに関して言うのであれば前世の自分は忍術学園というところで忍術を学び、立派なくのいちになること夢見ていた。周りには女友達よりも男友達が多く、忍者を夢見る同い年の男友達が何人が居たことを思い出す。あぁ何だか懐かしいなぁ、現世でもまた仲良く出来ないかなぁ、なんて思いながら呑気に登校しているときだった。


「うわっ!」


何か丸いボールのようなものを踏みつけたと思ったその拍子にドテンという大きな音を立てて派手に転んでしまった。何ということだ。昔のことを思い出してるうちに今現在の自分を見失ってしまっていた。というかめちゃくちゃ痛い。そういえば私は前世でも保健委員で現世でも保健委員の筋金入りの不運だった。


「痛っ〜・・・あ〜、本当朝からついてない」


自分にしか聞こえないほどの小さな声でそう言うと、隣と後ろの方から同じ学校の生徒であろう人の声がした。


「大丈夫か?」

「おーい!!!大丈夫か?」


声がした方向を見ると、A組の優等生久々知くんが私の方を見て何とも言えないような表情を浮かべていた。何これすごい恥ずかしいんですけど。と思ったのも束の間、今度は後ろの方から周りにいる誰もが振り向くであろう大声が聞こえ、まさかと思いそちらの方にも顔を向けるとそこにはB組の生物委員竹谷くんが人のよさそうな笑顔を浮かべてこちらへ駆け寄ってくれていた。


「え!?えーと、うん!大丈夫!すみません!ありがとう!」


恥ずかしさのあまり早口で返事をしてしまったが上手くちゃんと笑えていただろうか。なんて思いながらも誰に見られているかわからないこの状況を把握するために周りを見渡すと、そこにはA組の学級委員尾浜くん、B組の学級委員鉢屋くんと図書委員の不破くんがさっきの久々知くん同様何ともいえない表情を浮かべながら私のことを見ていた。何だこの羞恥プレイ恥ずかしすぎる。


自分でもどんどん顔が赤くなっていくのを感じながらもふと腕時計を見ると、もう委員会活動が始まっている時間で私が遅刻してしまったことは確定だった。あぁ、やってしまった!と思いながら、竹谷くんに助けてくれたお礼と感謝の気持ちを込めたお辞儀をすると、私は学校に向かって走り出した。



勘右衛門に兵助、八左ヱ門に三郎に雷蔵。みんなは覚えていないかもしれないけど、何故か私だけはみんなのことを覚えてる。本当に不思議だ。・・・それにしても現世でも仲良くなりたいとは言ったけどこんな始まり方は望んでいません、神様。というか私急いでて今日スカートの下にスパッツ履くの忘れてたんだけど、もしかして転んだときにパンツ丸見えだったんじゃないんだろうか・・・あぁ、どうせ見られるならば小学生みたいなパンツじゃなくてもっとちゃんとしたのを履いてれば良かった!

110619/210501

いつもと同じ朝だけど今日はどこか違う気がする

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