兵太夫くん本人にどう思っているのかと聞かれてから一週間。考えるに考えた結果恐らくというか何というか、10歳も年が離れている兵太夫くんに惹かれているという気付きたくなかった事実を理解することになってしまった。
何ということだ。何度も言うが兵太夫くんは10歳であり、まだ小学生だ。それに自分には年下趣味はないと思っていたから余計混乱している。そして自覚してしまったことによって家庭教師で兵太夫くんと二人きりになることを考えただけで緊張してしまい自然にため息が出た。


そんな混乱した頭のままで今日も家庭教師の日が来てしまった。そしていつもの如く笹山家のチャイムを鳴らすことに躊躇している自分が居る。兵太夫くんもそうだが、笹山さんとも顔を合わしづらい。家庭教師が息子に惚れてるだなんて笑えない事実だ。あぁ、ごめんなさい!と思いながらチャイムを押して笹山さんが迎えてくれるのを待っていると、何と玄関から出てきたのは兵太夫くんだった。


「こんにちは・・・ってあれ、お母さんは?」

「仕事。っていうか聞いてたんじゃなかったの?」


そう尋ねた私に呆れた様子で言葉を返す兵太夫くん。仕事ってどういうことだろうかと考えながら笹山さんとの会話を思い出す。・・・あぁ、そうか。笹山さんが電話をくれたとき、恐らく私は酷い勘違いをしてしまったんだろう。あの時は先週の一回だけだと思っていたが、笹山さんは“一回だけ”とは言っていなかった。ということは、今週も来週も兵太夫くんと二人きりということだ。
何だそうだったのか、と思いながら今日も頑張ろうと思い直していると、目の前の兵太夫くんを見たことで、また今日も兵太夫くんと二人きりだということに気付いてしまった。

先週はまだ自覚していなかったが今日は違う。兵太夫くんのことが好きだと気付いてしまったからこそ、二人きりの空間に耐えれるかが心配だ。


「ほら、取り合えず上がりなよ」

「あ、うん!お、おじゃまします!」


緊張のあまりどもってしまった私の姿に気付いたのか、兵太夫くんは「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」と楽しげに笑った。そしてそんな兵太夫くんの姿に胸が高鳴る自分が居て、これは本格的に重症だなと思い知らされることになった。



110514

自覚する

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