◎滝川・クリス・優(続編)




この間の一件から、あんな事をして反抗していた自分が子供っぽく感じ、馬鹿馬鹿しくもなった。だから私は、反抗する前の私に戻ることにした。そうと決めれば早かった。その日のうちに美容院に行って、黒染めして。伸ばしっぱなしだった前髪も、ちゃんと作った。ピアスの穴も塞ぐべく、外した。

次の日の周りの反応は、本当に失礼にも程があると言いたくなるぐらい失礼なものだった。両親たちは、泣いて喜んでいた。クラスメイト達からは、『…誰?』というような声も聞こえてくるし、先生たちからも、『本当に桐沢か?』なんて言われて。まあ、そりゃそうだろう。あれだけ荒れてた生徒がいきなり更生してやってきたのだから。そしてスカートも規定の長さに戻し、第一ボタンまで閉めて、リボンもちゃんとした長さに戻した。



数日後、クラスメイト達とも大分打ち解けられてきて、一緒に移動教室、なんてことも入れてもらえるようになった。『もっと早くに話しかけてればよかったな』とまで言ってくれる子もいて、本当にバカなことをしてたなと思った。先生に呼び出されたり、部活にちょっと顔を出してくるから先に行っててと言われ、私は教室に一人で帰っていた。すると、


「綾華」


と。廊下で擦れ違う優に引き留められた。何を言われるのか、と思いきや、


「元に戻ったみたいだな、綾華」


と声を掛けられる。素直になれない私は、『…優に言われたからじゃないから』と素っ気なく返す。だって、癪じゃない。言われたから戻す、なんて。そう思っていたら、


「…それでも、本当によかった」


と。優が、あんな目で言うから。その視線を向けられることに耐えられなくて、恥ずかしくなって。


「なっ、何言ってるの。別に…っ優には、関係ないじゃない!」


また私は、可愛げのないことを言う。何なの、何なの!本当に、止めて欲しい。


「おいクリス、ちょっといいか」


と言う声が優の後ろから聞こえてくる。私はその声に敏感に反応して、『じゃあねっ』と言ってその場から逃げるようにして立ち去った。

『邪魔だったか?』『……いや、』なんて会話が背後から聞こえてくる。ああもう。何なの、何なの?私に対する当てつけ?!挑戦状なの?!これ以上、恋をさせるのは止めて。

そう思いながらも、清々しい気持ちで背筋を伸ばして、歩いて行った。




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