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そして『キャーっ』と騒ぐ、エキストラの女の子。
この魅了してやまない、アイドルと呼ばれる芸能人・神宮寺 レン。
彼が私の婚約者だ。
けれど、彼の姿を見るたびに私は悲しく思う。
寂しく、思う。

「…私には、こんな姿、見せてくれたことない…」

婚約者といっても名ばかり。
私から連絡を取るか、もしくは彼の家の者を通して会ったりはしていた。
定期的に。
けれど、他人行儀なことばかりで、私はどうもできない。

彼は、私のことが嫌いなのだろう。
きっと、そう言うこと。
薄々感づいてはいたし、そんなにショックはないけれど。
それでもやっぱり。
―――好きな人に、そういう態度をされるのには、どうしても悲しくなる。

「お祖母様に話したら、怒られるかしら…」

私が考えている、あの話。
きっとお祖母様にこんなことを言うと、怒られるどころか、家を追い出されるかもしれない。
けれど。
私は、もう決めたの。

「…お祖母様には申し訳ないけれど…、納得してもらわざるを得ないわね」

私は普段あまり身に纏うことはない洋服を身に纏う。
白のタートルネックのインナー、そして某有名ブランドのタータンチェックのワンピース、ジャッキーブーツ、そして、彼から頂いたブランド物のバックを持つ。
背中付近まで伸びた髪を丁寧に梳【と】き、外に出る。



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