1:A secret plan  [ 2/14 ]


「…綾華さん」
「はい、お祖母様」
「神宮寺のご令息とはどうですか」

常に家では着物。『大和撫子たるもの、着物の一つもろくに着れなくてどうするのですか』というお祖母様からのお言いつけだ。家のことにしか興味のないお祖母様に私たち家族はいつも振り回される。

「…ご心配には及びません。大切にして下さっていますもの」

にこやかに、張り付けた笑みを浮かべる私自身に酷く嫌気がさす。何を笑いたくないのに笑っているんだろう。うまくなんて、いってないのに。いつからか、本心を隠し、いつからか、作り笑いが得意になった。それが、私が生きていく世界で、一番有効なものだと気付いたから。自分の気持ちにずっと嘘を吐き続ける私。別にこれでいい、いいんだわ。そうじゃなかったら、…彼と人生を共に歩むことは無理だから。

「そうですか。それは良いことです。綾華さんは、速水家の唯一の女。速水の為に嫁ぐことが貴女の役目なのです」
「重々承知しております」
「綾華さんは人類の中でもとりわけ聞き分けが良いですから、あまり心配はしていなかったのですけれど…」

あなたの未来が楽しみです、と本当にそう思っているのかどうかもよくわからない言葉を掛けられて。

「…すべては、速水家の為ですもの」

その言葉を聞いて、満足そうに笑うお祖母様。結局、私はそういう対象としか見られていないんだから。私は一礼してお祖母様から離れる。
速水家の為。
それは、この家の者皆が口にする言葉。捕われたように、呪われたように。私には、上に兄が2人いる。末っ子の私は女で、所謂政略結婚をさせられる。そう言った、運命だったのだと私は割り切っていた。そしてその婚約者は、

<本日のゲストはST☆RISHの神宮寺 レンさんです!>
<御機嫌よう、レディたち>

部屋に入り、両親やお祖母様に内緒で買ったスマートフォンをタップする。…画面に映る、私がよく知る人物。


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