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『綾華。此方がお前の婚約者の神宮寺レンくんだ』
『…』
幼い頃は人見知りが激しかった私は、急に婚約者だと言われ会わされたレンさんと話すことなんてできなくて、お祖母様の隣にいるお父様の後ろに隠れていた。
『すみません、綾華は人見知りが激しくて…』
『いえいえ。可愛らしいお嬢さんだ。よかったな、レン』
その頃には、もうお母様も亡くなられていて、神宮寺の実権は実質総一郎さんに任されていたようなものだった。
私はそんな彼を見て、子供ながらにドキドキしたのを覚えている。
幼い時から魅力的で、子供らしからぬ色気があった。
そんなレンさんに私は気後れしていて、少し戸惑っていたのを覚えている。
『…速水、綾華です…』
『神宮寺 レンだよ。よろしく、綾華』
けれどレンさんはそんな私に、優しくしてくださった。
幼いころは体が弱くて、入院していたこともある私。
そんな私を心配した両親は、あまり外にも外出させなかった。
そんな私に、いろんなことを教えてくれたのは、レンさんだ。
『綾華、かくれんぼしよう』
『えっ』
『メイド達に見つからないように、行くよ!』
自分だけで、家の中ではあるけれど外に出たのは初めてで、たかが家の中だけれど、すごく世界が広く感じだ。
それは、冒険だった。
遊ぶことすらもまともに何も知らない、無知な私に、新しい世界を見せてくれた。
『レン様と綾華様がいらっしゃらないんです!』
『何だって!?』
そんな声を聞きながら、レンさんと笑った記憶がある。
それも、今となったらいい思い出だ。
だから、そんな思い出を下さったレンさんのためならば。
私はどんなことだってする。
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