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家に帰れば、すぐに私はお祖母様の部屋に向かった。
思えば、お祖母様に反抗するのなんて初めてかもしれない。
ドキドキやワクワクなんてしないけれど、ただ。
ただただ、不安だった。

そして、


「…私、レンさんとの婚約を破談したいです」


突如そんなことを言えば、怒られるのは当然。
当然ながらに怒られた。
それはもう、火山の噴火のように。
けれども、私は案もなしにこんなことをいっているわけではない。


「神宮寺ではなく、他のお祖母様が見染められた方との婚約を必ず私は受け入れます。それがたとえ、10代の方でも、50代の方でも。ですから、この話を破談にして下さい」


どんな人とだって、結婚してあげる。
それが、レンさんと、速水の為になるならば。
私はそれでいい。


「…本気で言っているのですか。綾華…」
「本気です」
「…速水の名を貴女から取り上げてもですか」


戸籍から外すということだろう。
速水綾華という名を捨てる。
そう言うこと。

レンさんとの破談と、私の名前を捨てると言うこと。
そんなの、天秤に掛ける話じゃない。


「どうぞ、私を戸籍から外してくださって構いません」


レンさんの方が大切にきまっているじゃない。
そんな私の返答に怒りを爆発させてしまったお祖母様。
『綾華さん!貴女、自分が一体何を言っているのかわかっているのですか!』と。

お祖母様に怒鳴られる。
それでも、私は、折れることはない。


「私は、本気です。きっと、神宮寺家側も喜んで快諾してくださると思います」
「…っ貴女、何か仕出かしたのですか」
「いいえ」
「…っ頭を冷やしなさい!」


そう言われてお祖母様はこの部屋から出て行った。
どうして私の言うことを聞いて下さらないのだろうか。
それは、私にそれだけの力がないから。


「…レンさん…」


そんな私を支えて下さったのは、レンさん。
ただ、一人だった―――。





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