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彼もやっと柵から解き放たれたんだ。
それを誠一郎さんも彼を心から応援されている。
ならば、もう私も陰から応援すべきなんだ。
離れるべきなんだ。
だから、

「…神宮寺家は、きっとすぐに容認されるでしょう。私の家のことに関しては、レンさんの心配には及びません。私が説得します」

私の幸せなんていい。
貴方が、私が愛した貴方が。
貴方だけでも、幸せな人生をどうか。
親の決めたレールから放たれ、自由に歩めますように。

「いや…そう言う問題じゃ…」
「レンさんは、もう新しい道を切り開いています。…その道に、私は不要です。私などがいてはご迷惑になります」

私だって知識がないわけじゃない。
彼が生きる芸能界は、こういったスキャンダルは絶対NGだということを。
ましてや、彼はそうじゃなくても神宮寺財閥という大きな看板を背負っているのだ。
なのに、私が邪魔をする訳にはいかないの。

「…綾華」
「それにこんなに素敵なレンさんに、何も徳などない私は不釣り合いです」

ずっと、思っていたことだった。
なんでこんな素敵な人と、何もない私が婚約なんてことになったのか。
私は、不思議で不思議でたまらなかった。

でも、好きだったから。
ずっと、好きだったから。
この気持ちのままにズルズルと引きずってきたけれど。
もう潮時なの。

「だから、レンさん。もう、終わりにしましょう」

私の気持ちなど、どこにだって収められる。
だって、誰の為でもない。

―――これは、レンさんの為だから。


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