7:That time came  [ 8/14 ]


案内された場所はどうやら客間のよう。

「こちらは会議室です。普段は、私たちST☆RISHの打ち合わせをする場所ですから、誰にも邪魔されることはないかと」
「…ありがとうございます、七海さん」
「すまない、子羊ちゃん」
「いえ!では…」

…2人っきりになれば、沈黙が続く。
どうしていいのかわからない、沈黙が。
けれど、

「綾華」

彼がその沈黙を破る。

「…何ですか?」
「速水家の人は、今日綾華がここにいること、知っているのかい?」
「…知っていたら、反対されていました。ここに来ることなんて」

優雅にソファーに座り、足を組む彼。
そんな姿でさえも様になる。
それは、昔からだった。
『今は亡きお母様のような芸能人になりたい』と、随分昔にそう私にいってくれたことがあった。
あの時、どんなに嬉しかったか。
貴方はそれでさえも、覚えていなかった。

けれど、こういう風に実現したこと。
私は本当に嬉しく思っている。

「…綾華?」

この、早乙女学園に入ってからも。
デビューしてからも。
定期的に連絡をくれていた彼の優しさには本当にありがたくも思ったし、その電話が楽しみでもあった。

…けれど、

「…今日、ここに足を運んだのは、お話があったからです。…とても、大切な」

それも今日でおしまい。

長いようで、短かった。
私の、初恋もすべて。
悲しき思いも何もかも。

断ち切ることができる―――。


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