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「少し、お話があったのですが、やっぱりお忙しいようですので」
私は意地でも笑う。
張り付けた笑みを、見せる。
「…一人でこんなところまで来たのかい?」
「もう私は子供ではございませんので、レン様のご心配には及びません」
いつまでも、私だって、誰かに頼るばかりの私じゃない。
一人で買い物に行ったりもするし、一人で料理だってする。
いつまでも子供のように見ているのは、両親、お祖母様、そして貴方だけ。
「警備員さん、その手紙、今渡しますので」
「あ、…はい」
「ご足労おかけして、申し訳ございません」
「あ…っ、いえ!」
この身のこなしも、すべて。
私は貴方の為に身につけたものなんですよ?
そうとは思っても、言えない。
そんな恩着せがましいことは、彼には言えない。
「…あの、綾華、さんでした…よね?神宮寺さんと話すことがあるなら、中に入って―――」
「いえ、私は―――」
「ここまで来たんだ。…何か、用事が俺にあったんだろう?」
「…では、手短に」
私は、レンさんと話す機会がもらえて嬉しく思った。
それと同時に、これが最後なのだと。
そうとも思った。
それを肝に銘じて、私はこの厳重に包囲された中に入った。
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