断固、拒否反応。 | ナノ

◎8

2時間目が終わりを告げるチャイムが鳴る。
辺りは『終わったー!』なんて言いながら喜びに浸る声がいくつも聞こえる。

「綾華、終わったね!」

真奈美も、既にバッグを持って私の元に来ていた。

「真奈美、早いね」
「そりゃあね。もう、早く学校出たいし」
「ごめん、もうちょっと待ってよ」
「いいよ、ゆっくりして」

私は帰る準備をしながら、真奈美に、「どこでお昼食べる?」と聞く。
すると、

「私、久しぶりにパスタ食べたいなあ…。綾華は?」
「パスタ、私も食べたい」

今日の昼はパスタ。
何食べようかなあなんて考えつつ、帰る準備ができた私たちは学校を出る。

目の前に広がるあの早乙女学園。
昨日私は、あそこにいたと思うと、本当に嫌。

「はあ…」

それは、思わずため息がこぼれるほどだ。
そんな私を見てかどうかは知らないが、

「そう言えばこの目の前をみて思い出したけど、昨日はどうだったの?綾華」

真奈美がそう聞く。

「…うまくいったと思う?」
「…その様子だと、うまくはいかなかったのね」
「本当、ふざけないでって話なのよ。」

私は嫌いだと言っているのに。
嫌いだという人間に、どうしてそこまで執着する必要があるのかがさっぱり私には理解ができない。

「まあ、綾華に才能があるということは間違いないんだろうね」
「はあ?何言ってるの、真奈美」
「だってそう言うことでしょ?早乙女学園なんて、もはや芸能人や作曲の才能がある子が既に通っているところだし。競争率200倍を突破した人たちなんだもの。それなのに今でもなお、綾華に執着するってことは、よっぽど綾華に才能があるとしか思えないんだもの」

真奈美は『それはそれですごいことじゃない?』って笑って言う。

けどね。
『嫌い』だと思っているのに、続けることができるほど、この世界はそんなに甘くはない。
それは私が一番よく知っている。
自分じゃない、誰かの為に。
そんなこと、出来やしないんだよ。

「確かに中学の時もそうだったけど、綾華ピアノ巧かったしさ。作曲も上手いんだって言われたら私聞いたことないけど、納得できる気がするし」
「私はそれでも、早乙女には行きたくないの。それに、真奈美とも別れたくないしね」
「綾華…」

昨日、叔父さん…シャイニング早乙女は私にこう言った。

『綾華、MeはYOUに才能があるからここまで―――』

でもそれは、単なるお世辞。
私に作曲させるための、早乙女学園に入れるための。
それだけでしかないんだ。

しばらく歩くと、真奈美と以前に来たことのあるパスタ屋さんに着いた。

「…さーてっ、何食べよっかな!」

私はその話からそらすために、軽快なステップを刻みながら、私は入る。
その後ろ姿を真奈美が、心配そうな眼差しを向けていただなんて私は気付かなかった。


mae tsugi

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