周りを見れば、高そうな住宅が並んでいるところにいた。

まあ、こういう所に御幸が住んでいたとしても何ら不思議ではない。
何せ彼の年俸はもう、一般の人が一生をかけても稼げないであろう金額なのだから。
それにつけて、御幸は浪費家じゃないし、貯まって貯まって仕方がないと思う。
…いや、そんな野暮な詮索はしないでおこう。

そう思っていると、


「着いたぜ」
「え…っここ?!」


御幸が運転する車で着いたのは、それこそ想像していたものよりもすごいマンションだった。
いわゆる、“億ション”というやつだろう。
よかった、やっぱり御幸に迎えに来てもらって正解だったな、と思った。

もしも一人で入れ、なんて言われたら、きっと気後れしてUターンして帰っていたかもしれない。
兎にも角にもだ。
こんなところに入るなんて、人生で二度とないんじゃないだろうか、と思いながらも、車窓からただただ呆然とそのマンションを眺めていれば、『何呆けた顔してるんだよ』と指摘される。
その言葉に、あからさまにむっとした表情を見せながら、『呆けた顔も素敵って言えないの?』と言えば、『ははっ、無茶な話だな』とまた高らかに笑う。

こんな何気ない会話をしているだけなのに、先ほどからすごく幸せだと感じる。


「本当にすごいご活躍されてるのね、御幸」
「何だよ、いきなり」
「べっつに!」


主要駅からも近く、便利なマンション。
都内でも有数のいいマンションと言える。
そんなマンションに住めるぐらいの給料をもらっているということ。
知り合いの知り合いに借りてる、とは言ってたけど、絶対に高いに決まってる。

まあでも、このマンションは御幸の活躍を象徴しているようにも思えた。




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