恋愛カンニングペーパー


噂では密かに聞いていた。

『真田は2Bの桐沢綾華が好き』

発生源はどこからかは知られていないが、それは結構…いや。かなりのスピードで全校に知れ渡っていたようで、私も子耳には挟んでいた。多分、真田くんがいる前じゃ、皆恐ろしくて言わないのだろうから、真田くん自体はこの噂が流れていることも知らないんじゃないかなと私は思う。

私自身もつい最近まで知らなかった。
しかし噂を聞き付けた友人たちが、『ちょっとちょっと、綾華!』と言ってきた。友人たちには言っていなかったけれど、元々私も、真田くんのことは好きだったから。『そうなんだ』なんてそっけない態度を出したけれども、逆に嬉しかったし。

だから私も、行動に移すことにした。





「…っ待たんか!桐沢!」

それから数日後の月曜日。
学校に登校し、私はローファーから上履きに履き替えていた。すると、後方から呼び止められた。その声の主は、聞かなくてもわかる。――真田くんだ。

「おはようございます、真田くん」
「…何だ、あの手紙は…っ」

大急ぎで私を追ってきたのだろう。カッターシャツが第一ボタンまで閉まっていなかった。きっちりしている彼には珍しいなと思いつつ。やっぱりと嬉しく思った。初めはこの噂を知らないんじゃないかなとは思っていたが、もし。もしも知っていたなら、“あの”手紙の意味もきっとわかってくれるって思ったんだ。

「やっぱり、私も女子なんです」
「ぬ?桐沢は女子ではないか」
「…女の子は、好きな殿方からは告白されたいって思うんですよ」

どんなことをしても、ね。と私がコソッと真田くんに言えば、真田くんは顔を真っ赤にして私を見た。そう。私は先週の金曜日、放課後に“私も、貴方が好きです”という手紙を靴箱に入れておいたんだ。きっと部活で忙しい真田くんなら、校内にも出入りするはずだと思ったから。すると、ビンゴだ。

「…好きだ、桐沢」
「私も好きです」

答えの書いてあるカンニングペーパーを送ってあげたんだから、真田くんから告ってくれなきゃ困っちゃうよ。

私は真田くんと手を繋いで、教室まで上がった。


((end))
<まみゅうさま主催企画・「解のない恋愛」提出作品>



back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -